【初心者向け解説】暗号資産取引のルールが変わる?金融庁の新たな提案とは?

2024年2月19日、金融審議会総会(きんゆうしんぎかいそうかい)で、「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」の報告書が承認されました。

これは、2024年8月に金融担当大臣から依頼を受けてから、7回の話し合いを経てまとめられたものです。

では、金融審議会総会やワーキング・グループとは何なのでしょうか?

そして、今回の報告書にはどんな内容が含まれているのでしょうか?

暗号資産初心者でもわかるように、解説していきます。

金融審議会総会とは?

金融審議会総会とは、日本の金融に関するルールを考える会議のことです。

金融庁(きんゆうちょう)というお金に関する法律を作ったり、企業を監督したりする役所が、専門家や関係者を集めて、金融制度をどうするべきか話し合います。

今回の話し合いのテーマは「資金決済制度(しきんけっさいせいど)」と呼ばれる、お金のやりとりに関するルールです。

この中には、暗号資産(仮想通貨)や電子決済手段(ステーブルコイン)についても含まれています。

資金決済制度等に関するワーキング・グループとは?

金融審議会の中には、より詳しく話し合うための「ワーキング・グループ」という小さなチームがあります。

「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」は、暗号資産や電子決済手段のルールをどう改善するかを考える専門チームです。

今回、このワーキング・グループがまとめた報告書が金融審議会総会で承認され、今後の法整備に向けて進んでいくことになりました。

暗号資産取引所の破綻時の利用者保護が強化される?

今回の報告書では、暗号資産の取引所が倒産してしまったときに、利用者のお金を守る仕組みを強化することが提案されました。

これは、2022年11月にアメリカの大手暗号資産取引所「FTX」が突然破綻(はたん:会社がつぶれること)し、多くの人が預けた資産を失ってしまった問題があったためです。

日本では、こうしたことが起こらないように、「金融商品取引法」という法律のルールを参考にして、資金決済法にも新しい規定を導入することになりました。

金融商品取引法は、株や投資信託などの金融商品を扱う会社が守るべきルールを定めた法律です。

これを暗号資産にも適用することで、万が一取引所が破綻しても、利用者の資産が安全に保たれるようになります。

暗号資産の売買を仲介する新しい業態「所属制」が導入される

暗号資産の売買を手助けする新しいタイプの業者について、「所属制」という仕組みを導入することが決まりました。

これまでは、暗号資産を売買するには取引所を直接利用するか、業者が独立して運営する形が一般的でした。

しかし、新たに「特定の取引所に所属して仲介業務を行う業者」を認めることになります。

ただし、この仲介業者は利用者の財産を預からないことが条件となるため、AML/CFT義務(マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策)の対象にはなりません。

🔹 AML/CFT義務とは?

  • AML(Anti-Money Laundering)=マネーロンダリング(犯罪によって得たお金を、あたかも正当な資産のように見せかけること)の防止。
  • CFT(Counter Financing of Terrorism)=テロ資金供与(テロ活動に資金を提供すること)の防止。

つまり、所属制の仲介業者は直接お金を扱わないため、これらの規制の対象外となるということです。

ステーブルコインの新しい運用ルールとは?

電子決済手段(ステーブルコイン)についても、新しい提案が示されました。

これまで、ステーブルコインを発行する場合、裏付けとなる資産は「要求払預貯金(ようきゅうばらいよちょきん)」に限定されていました。

これは、すぐに引き出せる銀行の預金のことです。

今回の報告書では、新たに 短期国債(たんきこくさい:政府が短期間の資金を集めるために発行する証券)や 一定の定期預金(ていきよきん:一定期間引き出せないが利息がつく預金)でも運用を認める案が示されました。

ただし、これらの新しい資産の組み入れ比率は最大50%までとするルールが提案されています。

「資産の組み入れ比率」ってなに?

資産の組み入れ比率(しさんのくみいれひりつ)を簡単にいうと、お金をどのように分けて持っておくかの割合のことです。

例えば、おこづかいが1,000円あるとします。このお金を次のように分けるとしましょう。
500円 → すぐに使えるお財布の中に
300円 → 貯金箱に(少し長く持っておく)
200円 → お母さんに預ける(何かあったときのために)

✅ お財布の中のお金の割合は 50%(500円)
✅ 貯金箱に入れるお金は 30%(300円)
✅ お母さんに預けるお金は 20%(200円)これが「組み入れ比率」です。

今回の話でいうと、ステーブルコインを発行する会社が、持っているお金のうち、最大50%までは短期国債や定期預金で管理してもいいというルールが決められました。

つまり、「すぐに使えるお金」と「長く預けるお金」のバランスをどうするかを決めるルールのことなんです!

🔹 特定信託受益権(とくていしんたくじゅえきけん)とは?
ステーブルコインの発行者が、利用者のために管理する資産の権利のことです。

たとえば、1コイン=1円として発行されたステーブルコインが、ちゃんとその金額分の資産で支えられていることを保証する仕組みの一つです。

今後の動きは?何がどう変わるの?

金融庁は、この報告書を加藤勝信(かとうかつのぶ)金融担当大臣に提出しました。

これから、実際に法律を作るための具体的な準備が進められます。

では、今回のルール変更で何がどのように変わるのかを分かりやすく説明していきます

① 取引所がつぶれても、利用者のお金が守られる

🔹 今まで
暗号資産(仮想通貨)を取引所に預けていた人たちは、取引所が破綻(はたん:つぶれること)すると、お金を失うリスクがあった
たとえば、2022年にアメリカの大手取引所「FTX」が突然破綻し、多くの人のお金が戻ってこなくなった。

🔹 これから
取引所がつぶれても、利用者のお金がきちんと守られるルールができる
これは、株(かぶ)などの投資のルールを参考にして、取引所が利用者のお金を安全に管理する仕組みを作るから。

👉 つまり! 今までは「取引所に預けたお金=取引所のもの」のような扱いになってしまうことがあったけど、これからはちゃんと「利用者のもの」として守られるようになる

② 暗号資産の売買を手伝う人(仲介業者)の新しいルールができる

🔹 今まで
暗号資産を売買するときは、取引所が直接対応するか、独立した業者が間に入ることが多かった。
でも、この業者のルールが曖昧(あいまい)で、安全性に不安があった

🔹 これから
新しく「所属制(しょぞくせい)」という仕組みができる
👉 仲介業者は、必ず特定の取引所に所属することになり、より安全な環境で売買を手伝うことができるようになる。
👉 ただし、仲介業者は「お客さんのお金を預からない」ことが決められているので、マネーロンダリング(犯罪で得たお金を隠すこと)の対策ルールは適用されない

👉 つまり! 今までは誰がどんなルールで仲介しているかわかりにくかったけど、これからは決められた取引所のもとで動くので、安心して売買できる

③ ステーブルコインの運用ルールが広がる

🔹 今まで
ステーブルコインを発行するときの「元になるお金」は、すぐに引き出せる銀行預金(要求払預貯金)だけに限られていた。
でも、これだと運用の自由度が低く、資産の管理が難しくなることがあった。

🔹 これから
新しく、短期国債や定期預金も使ってOKになる
ただし、新しい資産の割合は最大50%までという上限がつく。

👉 つまり! 今までは「100%すぐに使えるお金」で準備しなければいけなかったけど、これからは「半分は別の方法で運用できる」ようになり、より柔軟に管理できるようになる

項目今までこれから
取引所の破綻時の利用者保護取引所がつぶれたら、預けたお金が戻らない可能性があった取引所がつぶれても、利用者のお金が守られるルールができる
暗号資産の仲介業者のルールどんな業者が仲介しているかよくわからなかった「所属制」ができて、安全な仲介業者だけが取引できるようになる
ステーブルコインの運用方法100%銀行預金で管理する必要があった短期国債や定期預金でも運用できる(ただし最大50%まで)

👉 今までよりも、暗号資産のルールがしっかりして、安全に取引できるようになる!

これからも、暗号資産の世界はどんどん変わっていきます。新しいルールができることで、より安心して使える環境になっていくので、引き続き注目していきましょう。

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