トランプ氏の仮想通貨業界への姿勢と支援者との関係
トランプ大統領は過去に仮想通貨へ批判的な発言をしてきました。
例えば、2021年にはビットコインなどの暗号資産を「詐欺だ(scams)」とまで呼んで酷評していたことが報じられています。
2019年にも「ビットコインや仮想通貨のファンではない」とツイートし、その価格変動の激しさや違法行為への利用可能性を指摘した経緯があります。しかし2024年の大統領選キャンペーン期から態度が一変し、仮想通貨業界に急接近しました。
2024年7月には米国最大級のビットコイン会議「Bitcoin 2024」に登壇し、民主党バイデン政権の規制強化を批判するとともに、自身を「暗号資産に理解のある候補」としてアピールしています。
共和党全体もこの頃から「仮想通貨支持票の取り込み」を掲げ、規制緩和を約束する戦略を強めました。
トランプ氏の姿勢転換に伴い、暗号資産業界の有力者たちも同氏を公然と支持し始めました。
著名な例として、双子のウィンクルボス兄弟(Gemini取引所創業者)はトランプ氏の選挙資金にそれぞれ100万ドル相当のビットコインで献金を試みました(寄付上限を超えたため受理されませんでしたが、この動き自体が象徴的です)。
さらに主要な暗号資産関連企業も続々とトランプ陣営に接近しました。
2024年大統領選後から就任式にかけて、業界大手はトランプ氏の就任式基金に少なくとも総額1,000万ドル以上を拠出しています。
具体的には、Ripple社(仮想通貨XRPの発行企業)は500万ドル相当のトークンを寄付し、CEOのブラッド・ガーリングハウスら幹部は就任直前にマー・ア・ラゴでトランプ氏と面会するなど緊密な関係を築きました。
他にも米大手取引所のCoinbase社、Kraken社、ステーブルコイン発行のCircle社が各100万ドル、オンライン証券のRobinhood社が200万ドルをそれぞれ寄付しています。
業界団体Blockchain Associationの代表は「トランプ氏は米国初の明確に暗号資産支持を掲げる大統領になる」と述べ、業界全体が規制改革への期待から「お祭りムード」で巨額献金を行ったと報じられています。
このようにトランプ氏は仮想通貨業界の支持者や献金者との強固なつながりを築き、政権発足直後には暗号資産・AI担当のホワイトハウス顧問にテック投資家のデビッド・サックス氏を起用するなど、業界寄りの人事・政策を打ち出しました。
一方で、この急接近には批判的な見方もあります。米政策監視団体の代表デニス・ケレハー氏は「業界は規制を骨抜きにするため政治家を買収しようとしている」と指摘し、共和党が暗号資産支持に舵を切った背景には業界からの資金提供があると警鐘を鳴らしています。
実際、業界系のスーパーPAC(政治行動委員会)は2億3千万ドル超もの資金を調達し親暗号資産の議員支援に投じたとの報道もあり、トランプ氏の姿勢転換は単なる信条の変化というより政治的な計算と支援者の利益が絡んだものだと見られています。
BitMEX共同創業者への恩赦とその受益者
2025年3月末、トランプ大統領は暗号資産デリバティブ取引所BitMEXの共同創業者3名(アーサー・ヘイズ、ベンジャミン・デロ、サミュエル・リード)に対し恩赦を与えたと報じられました。
併せて、BitMEX元幹部のグレゴリー・ドワイヤー氏およびBitMEXの運営法人であるHDRグローバル・トレーディング社に対しても「完全かつ無条件の恩赦」が与えられています。
この恩赦措置によって、以下の関係者・団体が直接的または間接的な利益を得ると考えられます。
- BitMEXの共同創業者本人たち
ヘイズ氏ら3名は2020年に銀行秘密法(Bank Secrecy Act)違反容疑で起訴され、2022年に有罪答弁を行って罰金各1,000万ドルと保護観察(執行猶予付き判決)を受けていました。
彼らは収監こそ免れていたものの有罪犯罪者としての法的地位が残っていました。
恩赦によりこれら有罪判決が取り消され名誉回復がなされるため、米国への入国や今後のビジネス展開における法的制約が解消します。
実際、デロ氏は声明で「我々は不当に標的にされた。古く時代遅れの法律で刑事訴追されるべきではなかった」と主張し、今回の大統領恩赦が「我々の無実を示す完全な免罪」であり、自身と共同創業者に対する政治的なスケープゴート(生け贄)的扱いが正されたと歓迎しています。
ヘイズ氏もX(旧Twitter)上で大統領公式アカウントに向けシンプルに「Thank you(感謝します)」と投稿し、恩赦への謝意を示しました。このように、恩赦は共同創業者ら個人にとって経済的・社会的な復権をもたらし、彼らが今後も業界で活動を続ける道を開いたといえます。 - BitMEX社および関連企業
今回、法人としてのBitMEX運営会社(HDR社)も恩赦の対象となりました。
BitMEXは2021年に商品先物取引委員会(CFTC)から1億ドルの罰金を科されるなど規制当局との和解を済ませていますが、刑事上の有罪記録が抹消されることで企業としての信用回復につながるでしょう。
これにより、米国市場での事業展開や他企業との提携交渉が円滑になる可能性があります。
また、共同創業者が名誉を回復したことで、彼らが再び同業界で起業・投資活動を行う場合にも支障が減ると考えられます。
例えばデロ氏は「BitMEXや我々共同創業者は本来、犯罪者として起訴されるべきではなかった」と述べており、恩赦によりBitMEXプロジェクトの正当性が公式に認められた形です。
結果としてBitMEXの既存ユーザーや関係者も、同社と創業者に掛かっていた犯罪者の烙印が消えた恩恵を受けるでしょう。 - 暗号資産業界全体
今回の恩赦は、トランプ政権が暗号資産ビジネスに友好的な姿勢を具体的行動で示したものとして受け止められています。
以前の政権(バイデン政権下)では、米証券取引委員会(SEC)や司法省が暗号資産企業に対して厳しい法執行を行ってきましたが、トランプ氏の就任後、業界には規制緩和への期待が広がっていました。
実際、政権発足後にトランプ氏が任命した新SEC委員長マーク・ウエダ氏の下で、CoinbaseやRipple、Crypto.comなど複数の暗号資産企業に対する調査・訴訟が打ち切られたと報じられています。
業界からすれば、BitMEX創業者への恩赦もこの流れの一環であり、「暗号資産業界に対する大統領のお墨付き」とも捉えられるのです。
これにより、他の暗号資産起業家や投資家も活動を萎縮させることなく米国市場でビジネスを継続できるとの安心感を得たと考えられます。
さらに、Silk Road(闇市サイト)創設者のロス・ウルブリヒト受刑者に対する恩赦(終身刑からの解放)など、トランプ政権が示す一連の措置は「暗号資産関連の犯罪には寛大に対処する」というメッセージとして受け止められており、業界全体が間接的な利益を得ています。 - トランプ陣営の献金者・支持企業
今回の恩赦によって直接恩恵を受けるBitMEX創業者らは、公的にはトランプ氏の支援者リストには挙がっていません。
しかし、広く暗号資産業界全体で見れば、政権に協力的な企業・人物ほど有利な扱いを受けている傾向が指摘されます。
前述の通り、Ripple社やCoinbase社など多数の企業がトランプ氏就任式に巨額の資金提供を行いましたが、その見返りのように当局からの訴追リスクが和らいでいます。
このことは、献金者が結果的に得をしている構図とも言えます。
実際、暗号資産ニュースサイトは「トランプ氏が暗号資産を受け入れた後、多くの業界リーダーたちが彼の就任式に資金提供し親密な交流の場に出席した。
その見返りにトランプ氏は暗号業界に有利な措置を次々と打ち出した」と報じています。
BitMEX創業者に対する恩赦も、業界全体へのアピールであると同時に、政権と歩調を合わせる企業・個人への報奨的側面があると見る向きがあります。
例えば、ウルブリヒト氏への恩赦は長年恩赦嘆願運動をしてきたビットコイン支持層への迎合と指摘され、FTX元CEOのサム・バンクマン=フリード被告もトランプ政権に接近し恩赦獲得を図っていると報じられています。
これらは直接の「見返り」ではないにせよ、暗号資産業界の支援者が今後も優遇策にあずかる可能性を示唆しており、恩赦はその一端といえます。
恩赦によるトランプ氏の政治的・経済的メリット
トランプ大統領がBitMEX創業者らに恩赦を与えた背景には、自らの政治的利益を最大化する計算があると考えられます。
第一に、暗号資産コミュニティからの支持獲得です。暗号資産ユーザーや投資家は近年増加傾向にあり、業界団体「Stand With Crypto」は130万人以上の支持者を組織したとされています。
必ずしも人数的に大票田とは言えないものの、熱心な支持層であり資金力もあるこのコミュニティにアピールすることは、選挙戦略上理にかなっています。
トランプ氏の陣営や共和党は実際に「仮想通貨有権者」の票と献金を取り込むべく規制緩和などの公約を掲げており、今回の恩赦もその公約を実行に移したものです。
恩赦によって「暗号資産に寛容な大統領」というイメージを一層強めることで、暗号資産支持層の信頼を勝ち取り、今後の選挙での票集めに繋げる狙いがあると見られます。
第二に、暗号資産業界からの資金援助や経済的支援を引き続き得られるメリットがあります。
トランプ氏は選挙期間中から露骨に業界に秋波を送り、多くの「クリプト富豪」たちを味方につけました。
報道によれば、トランプ陣営は積極的に「暗号資産マネー」を求め、選挙キャンペーン中に業界の大口献金者を口説いて支援を取り付けていたとされています。
実際、ウィンクルボス兄弟のような億万長者からの巨額寄付の申し出や、前述した企業からの就任式基金への多額寄付は、トランプ氏の方針転換への見返りと言えます。
今回の恩赦劇により、トランプ氏は「約束を守り業界を守った」という既成事実を作りました。
これは他の業界関係者にも「支援すれば報われる」というメッセージとなり、今後ますますトランプ氏陣営への資金提供や協力を呼び込む効果が期待できます。
実例として、暗号資産取引所大手CoinbaseのCEOブライアン・アームストロング氏は政権移行期に議員らと活発に会合を持ち、少なくとも2度トランプ氏本人とも面会しています。
こうした太いパイプは政策提言のみならず、選挙資金や経済アドバイスといった面でもトランプ氏に利益をもたらすでしょう。
さらに政策面・経済面での成果も見逃せません。
トランプ政権は暗号資産業界寄りの政策を掲げ、例えば「米国政府としてビットコインを備蓄する」「暗号資産の規制枠組みを業界有識者に作らせる」といった大胆な案も打ち出しています。
恩赦によって「政府が暗号資産を公式に容認する」姿勢を示すことは、国内のブロックチェーン関連投資やフィンテック企業の事業拡大を促進し、結果的に雇用創出や技術競争力向上といった経済的メリットにつながる可能性もあります。
トランプ氏にとっては、支持層を広げるだけでなく「自らの政策で経済を活性化させた」という実績アピールにも利用できるわけです。
加えて、今回の恩赦は従来の金融規制当局への牽制にもなっています。
前政権下で唯一暗号資産関連の罪で実刑を受けたバイナンス社の趙長鵬(CZ)氏は、自身が米史上初めてBSA違反で服役した人物となったことに不満を示しつつ「恩赦を望まない犯罪者はいない」と述べています。
トランプ氏の動きは、こうした富裕な業界人にもアピールし、彼らが米国市場に資本投下するインセンティブを高める効果があるでしょう。総じて、恩赦はトランプ氏に対し「票」「カネ」「産業界からの協力」という政治的・経済的リターンをもたらす手段となっているのです。
恩赦に関するホワイトハウスの発表、報道の真偽とメディアの見解
2025年3月28日のBitMEX創業者への恩赦報道は、当初ホワイトハウスから公式発表が無い状態で伝えられました。
米経済メディアCNBCが最初にこのニュースを報じたとされ、それを受けて複数の主要メディアが「情報筋によれば」との断り付きで速報しました。
ホワイトハウスが正式声明を出したのは報道からやや遅れてからで、報道翌日の3月29日未明(米時間)になって「トランプ大統領がBitMEX共同創業者3人に恩赦を与えた」とホワイトハウス高官が認めたとロイター通信が伝えています。
この高官によれば、恩赦は3月27日(木)付けで署名されたとのことです。
一方、暗号資産メディアのCointelegraphは「記事執筆時点でホワイトハウスから恩赦に関する声明は出ていない」と指摘し、公式発表の遅れを報じました。
最終的にはBitMEX側も広報を通じ恩赦を確認し、ドワイヤー氏とHDR社への恩赦も含めて「全面的かつ無条件の恩赦」を受けたことをReutersにメール声明で認めています。
以上より、今回の恩赦報道は確度の高い事実であり、最初は匿名情報に基づいていたものの複数の信頼できる情報源によって裏付けが取れた真実のニュースと言えます。
メディア各社の受け止め方を見ると、その論調や焦点の当て方には多少の違いがあります。
経済紙ブルームバーグやReutersは主に事実関係を伝え、BitMEX創業者らが2020年の起訴後に有罪答弁し保護観察処分となっていたことや、直前に元ニコラCEOのトレバー・ミルトン氏への恩赦も行われていたことなど背景情報を詳述しました。
またReutersは「この恩赦は業界がトランプ政権下で規制緩和を期待する中で起こった。
トランプ氏は選挙中に暗号資産ロビーから資金と票を取り込もうと働きかけ、支援を約束していた」と分析し、今回の措置を選挙戦略や規制政策の文脈で捉えています。
一方、暗号資産専門メディアはより業界寄りの視点で報じました。
Cointelegraphは「3名はいずれも既に自宅拘禁や執行猶予付き判決を受け罰金支払いも済ませており、恩赦の理由は明らかでない」と疑問を呈しつつ、「トランプ氏は就任以来、1月6日議事堂事件の関与者1500人超やSilk Road創設者ロス・ウルブリヒト受刑者への恩赦など物議を醸す恩赦を次々に出している」と指摘しました。
これは今回のBitMEX恩赦も含め、トランプ氏の恩赦乱発が論争的であるとの論調です。
他方でCoinDeskは恩赦を支持する側の声も伝えています。
CoinDeskの報道では、デロ氏の「我々は生け贄にされたのだ」というコメントや、業界関係者から「BitMEXは米国の金融イノベーションに重要な役割を果たした。不当な司法プロセスが是正された」という擁護論が紹介されました。
実際、SNS上でも「適切な恩赦だ。BitMEXは不当に犯罪者扱いされていた」という業界寄りの反応が見られ、暗号資産コミュニティの一部は今回の決定を歓迎しています。
一方で批判的な論調としては、「マネーロンダリングプラットフォームを運営していた3人の創業者を赦免するとは、政治的な思惑を感じる」といった声や、極端なものでは「3人合わせて1,000万ドルをトランプ就任式に寄付していたというのは偶然か?」と金銭的な裏取引を示唆する憶測も出ました。
後者について確たる証拠はなく、実際には1,000万ドルは複数企業からの寄付合計額ですが、それだけ今回の恩赦が「支援者優遇」と受け取られかねない状況であることを物語っています。
総じて、主要メディアは事実報道とその背景分析に努め、暗号資産メディアや関係者は歓迎と期待を示す一方、政治・法務の観点からは贖罪なき恩赦への批判や政権と業界の癒着を疑う見解も存在します。
政治専門誌Politicoは「暗号業界はバイデン政権下での締め付けに辟易し、トランプ政権への影響力確保のため巨額の献金攻勢をかけた」と伝えており、今回の恩赦はそうした業界の投資に対するリターンと見ることもできると示唆しました。
一方、暗号資産支持者の間では「トランプ氏こそが業界を守る救世主だ」との声も強まっており、恩赦はそのイメージを裏付ける出来事となっています。
今後、Roger Ver(通称「ビットコイン伝道師」)のように法的トラブルを抱える他の著名人にも恩赦が及ぶのではないかとの観測も飛び交っており、メディアも含め各方面がトランプ氏の動向を注視しています。
以上のように、2025年3月末に報じられたトランプ大統領によるBitMEX共同創業者への恩赦は、単なる個人恩赦に留まらず、トランプ政権と暗号資産業界の関係性を象徴する出来事となりました。
その背景にはトランプ氏の仮想通貨観の変遷と支持基盤の計算があり、恩赦によって恩恵を受ける人々・団体が存在する一方、トランプ氏自身も政治的・経済的利益を得ています。
ホワイトハウスの公式発表こそ遅れたものの報道の信憑性は高く、主要メディアはこの動きを確かなものとして伝えました。
そしてその見解は歓迎から批判まで様々ですが、いずれにせよ「仮想通貨に優しい大統領」の誕生を強く印象づける出来事であったと言えるでしょう。

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