機関投資家のDeFi市場への進出:リスクとFireblocksの取り組み

デジタル資産の管理とセキュリティを専門とするFireblocksの幹部は、分散型金融(DeFi)への機関投資家の関心が急速に高まっていると報告しています。

DeFiはブロックチェーン技術を活用して、伝統的な金融機関を介さずに金融サービスを提供するシステムです。

この革新的なアプローチは、市場の透明性を向上させ、ユーザーにより直接的なコントロールを提供する一方で、新たなリスクも伴います。

特に、DeFiの中核を成すオンチェーン取引は、ブロックチェーン上で直接、透明に行われる取引ですが、スマートコントラクトの脆弱性や市場の急激な価格変動によるリスクが懸念されています。

スマートコントラクトは、事前に定義された条件が満たされると自動的に実行されるプログラムであり、これがDeFiプロジェクトの自動化と効率化を支えていますが、プログラムのバグやセキュリティの穴が原因で資金が失われる可能性もあります。

これらのリスクに対処するため、Fireblocksはプラットフォームに新機能を導入することを計画しており、これにより機関投資家がDeFiに投資する際のセキュリティを大幅に強化することを目指しています。

この新機能は、より安全な取引環境を提供することで、機関投資家がDeFi市場に安心して参入できるよう支援することを期待されています。

この記事では、DeFiが機関投資家にとってどのようなチャンスをもたらし、またどのような課題が存在するのか、さらにFireblocksがどのようにこれらの課題に対処しているのかを詳しく掘り下げていきます。

機関投資家のDeFi市場参入と関連リスク

ファイアブロックスのセキュリティ・トラストプロダクト担当副社長、シャハール・マダール氏によれば、機関投資家がDeFi取引に参加する際のリスクは大きいとされています。

コインテレグラフとのインタビューでマダール氏は、「機関投資家は平均的なトレーダーよりもはるかに多額の資金を管理しており、未知で予測不可能なDeFiへの関与リスクは、彼らのリスクポートフォリオで重要な位置を占めている」と述べました。

これは彼らの資産管理戦略において重要な考慮事項であり、多額の資金が関与することで、潜在的なリスクが増大します。

DeFi市場の成長と機関投資家の参加拡大

にもかかわらず、マダール氏はファイアブロックスでの機関投資家によるDeFi取引が2024年第1四半期に75%増加し、約45億ドルに達したと報告しています。

この増加は、DeFi市場の潜在的な収益性に対する信頼の表れであり、機関投資家たちがこれらの高リスクを乗り越えてまで市場に参入していることを示しています。

総ロック価値(TVL)とセキュリティの課題

DefiLlamaによると、DeFi(分散型金融)の総ロック価値(TVL)は950億ドルに達しています。

TVLとは、DeFiプロトコルに預けられた資産の総額を表し、これにはさまざまなブロックチェーン上で運用されているスマートコントラクトを通じて管理される資金が含まれます。

この高額な数値は、DeFi市場の規模とその成熟度を明確に示しており、多くの投資家や開発者がこの新しい金融生態系に引き寄せられています。

DeFiプロトコル(分散型金融プロトコル)とは、ブロックチェーン技術を基盤として、従来の金融システムに代わる新しい形の金融サービスを提供するためのルールや契約のセットです。

これらのプロトコルは主にスマートコントラクトによって運用され、これは自動実行プログラムの一種であり、契約の条件がデジタル的に記述され、ブロックチェーン上で自動的に履行されます。

DefiLlamaは、DeFiプロトコルの分析とデータ提供に特化したプラットフォームであり、TVLをはじめとする重要な市場指標を集約しています。

このプラットフォームは、異なるブロックチェーンネットワークにわたるデータを一元化し、ユーザーがDeFi市場の動向をリアルタイムで把握できるよう支援しています。

しかし、ファイアブロックスのセキュリティ・トラストプロダクト担当副社長であるシャハール・マダール氏は、この高いTVLが「攻撃者からの注目を集めている」と指摘しています。

DeFiプロトコルは、スマートコントラクトを利用して自動的に運用されるため、プログラムの脆弱性が悪用されるリスクが存在し、市場の急速な成長と共にセキュリティの課題も増加しています。

このため、投資家にはこれらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが求められています。

機関投資家向けのDeFiスイートと新機能の導入

ファイアブロックスは、機関投資家向けに特別に設計されたDeFiスイートに2つの新しいツールを追加しました。

「トランザクションシミュレーション」は、スマートコントラクトを署名する前にウォレット内でどのような操作が行われるかをユーザーが確認できる機能であり、取引の透明性と安全性を向上させます。

「DAppプロテクション」は、コントラクトの悪意のある要素を分析し、不審なスマートコントラクトについてユーザーに警告する機能で、機関投資家がDeFi市場で直面するセキュリティリスクを軽減するために設計されています。

これらのツールは、より安全なDeFi取引環境を提供することで、機関投資家に市場参入の門戸を広げています。

DeFiにおける機関投資家の興味と必要な改善点

ファイアブロックスのシャハール・マダール氏によれば、DeFiが機関投資家をより効果的に引き付けるためには、特に「セキュリティ、ユーザーフレンドリーなインターフェース、効果的なリスク管理」の向上が必要だとされています。

これらの要素を優先することにより、DeFi及び業界全体の認識を変えることが可能になり、より広範な市場の信頼を獲得することができるとマダール氏は考えています。

ユーザーインターフェースの重要性

「インターフェース」とは、ユーザーがシステムと対話するためのデザインやレイアウトを指します。

DeFiプラットフォームにおいてユーザーフレンドリーなインターフェースを提供することは、技術的な知識が限られたユーザーでも容易にプラットフォームを利用できるようにするため重要です。

これにより、より多くの機関投資家がDeFi市場に参入しやすくなります。

ステーキングとデジタルアセット管理

マダール氏によると、機関投資家は「ステーキング」や「再ステーキング」、さらには実物資産の「トークン化」への関心が高まっています。

ステーキングとは、ブロックチェーンネットワークのセキュリティや運営に寄与するために自身の暗号資産を一時的に預けることであり、これにより報酬を得ることができます。

DeFiアプリケーションと活動の増加

ファイアブロックスのユーザーは、Uniswap、Aave、Curve、1inch、Jupiterを含む分散型アプリケーションで「スワッピング」(異なる通貨の交換)、「レンディング」(資金の貸出)、ステーキング、そして「ブリッジング」(異なるブロックチェーン間での資産移動)を積極的に行っています。

これらの活動は、DeFiの多様性と柔軟性を示しており、機関投資家に多くの選択肢を提供します。

カウンターパーティリスクの軽減

伝統的な金融プレーヤーの関心は、DeFiのインフラを利用して「カウンターパーティリスク」のない、より安全な金融エコシステムを確立することにあります。

カウンターパーティリスクとは、取引の相手方が契約の条件を履行できないリスクを指し、DeFiを利用することでこのリスクを排除し、直接的かつ透明な取引が可能になります。

これらの要素を組み合わせることで、DeFiは伝統的な金融市場の限界を超え、機関投資家にとって魅力的な代替投資先としての地位を確立する可能性を持っています。

まとめ

分散型金融(DeFi)市場は、機関投資家からの関心が高まっており、Fireblocksのシャハール・マダール氏は、セキュリティ、ユーザーフレンドリーなインターフェース、効果的なリスク管理の重要性を強調しています。

これらの要素が強化されれば、業界全体の認識が変わり、市場の信頼性が向上すると見られています。

DefiLlamaによると、DeFiの総ロック価値(TVL)は950億ドルに達しており、この数字は市場の成熟度を示していますが、高いTVLは攻撃者からも注目され、セキュリティリスクが伴うことをマダール氏は指摘しています。

さらに、機関投資家はステーキング、再ステーキング、実物資産のトークン化に注目しており、Fireblocksのプラットフォーム上で、Uniswap、Aave、Curve、1inch、JupiterといったDeFiアプリケーションを通じて、スワッピング、レンディング、ステーキング、ブリッジングなどの活動が活発に行われています。

伝統的な金融プレーヤーは、カウンターパーティリスクのない安全な金融エコシステムの構築にも関心を持っており、これがDeFiプラットフォームのさらなる発展を促しているのです。

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