参照元:コインテレグラフジャパン
最近、著名な経済学者タイラー・コーエン氏とアレックス・タバロック氏が運営するポッドキャスト「マージナル・レボリューション」で、2024年のノーベル経済学賞の受賞者候補についての議論が行われました。
このエピソードが配信されたのは10月8日で、特に話題を呼んだのは、コーエン氏が「異例の選択」として、イーサリアムの共同創設者でありコンピュータ科学者でもあるヴィタリック・ブテリン氏を挙げたことです。
イーサリアムとは、ビットコインに次ぐ代表的な暗号資産(仮想通貨)であり、ブロックチェーン技術を使って、より多くの機能を提供できる仕組みです。
ブロックチェーンとは、取引の記録を安全に保存するための技術です。
この技術により、誰かがデータを勝手に改ざんすることを防ぎます。
ヴィタリック・ブテリン氏は、このイーサリアムを通じて、ブロックチェーン技術の可能性を広げ、金融や契約などの分野で新しい仕組みを作り出しています。
コーエン氏の予測は、経済学賞の範囲を広げる意味で驚きですが、暗号資産の影響力がますます大きくなっていることを考えると、このような選択も現実的と言えるかもしれません。
ヴィタリック・ブテリン氏
ロシア出身のカナダ人で、仮想通貨イーサリアムの共同創設者として広く知られています。
幼少期からプログラミングに優れ、暗号資産の可能性に注目していました。
ビットコインの登場後、ブテリン氏はその技術に魅了されましたが、より多機能なブロックチェーンが必要であると考え、2015年にイーサリアムを立ち上げました。
イーサリアムは、単なる通貨の送受信にとどまらず、スマートコントラクト(自動で契約を実行するプログラム)や分散型アプリケーション(DApps)を実現するプラットフォームを提供し、仮想通貨の世界に革命をもたらしました。
彼のビジョンは、ブロックチェーン技術を使って金融システムやインターネットの構造そのものを変革することにあります。
タイラー・コーエン氏とアレックス・タバロック氏

アメリカの著名な経済学者であり、共にジョージ・メイソン大学で教授を務めています。
ジョージ・メイソン大学は、バージニア州にある研究型大学で、特に経済学の分野で知られており、革新的な経済理論や公共政策に焦点を当てた研究が盛んに行われています。
同大学の経済学部は、自由市場経済や公共選択論といった分野で高い評価を受けており、コーエン氏とタバロック氏はその中心的な存在です。
彼らは、経済学に関する幅広い知識を一般の人々に伝えることを目指し、ブログ「マージナル・レボリューション」や同名のポッドキャストを運営しています。
このポッドキャストでは、経済理論から時事問題まで、専門的なトピックをわかりやすく解説しており、多くのリスナーに支持されています。
特にタイラー・コーエン氏は、国際的な経済論議において影響力のある人物であり、その洞察は経済学界でも高く評価されています。
彼とタバロック氏は、ノーベル経済学賞に関する予測や解説を行うことが多く、毎年の受賞者やその功績について独自の見解を発信しています。
ノーベル賞は、科学や人類への貢献が認められる世界的な賞であり、経済学賞は特に経済学における重要な発見や研究に対して授与されます。
彼らの視点は、ノーベル経済学賞の候補者やその影響をより深く理解する助けとなり、リスナーにとって貴重な情報源となっています。
ブテリン氏の貢献と価値

コーエン氏とタバロック氏は、理論経済学における価値について議論しながらも、イーサリアム共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏が「貨幣経済学に実際に貢献した」として、ノーベル経済学賞にふさわしいとの見解で一致しました。
貨幣経済学とは、通貨がどのように価値を持ち、どのように人々の間で流通するかを研究する分野です。
ブテリン氏は、暗号資産(仮想通貨)であるイーサリアムを通じてこの分野に新しい風を吹き込みました。
ブテリン氏とミーゼスの遡及定理(そきゅうていり)
コーエン氏は、ブテリン氏の功績について次のように語っています。
「ヴィタリックはプラットフォームを構築し、通貨を創造した。
言い換えれば、ミーゼスの遡及定理を反証したとも言える」。
ミーゼスの遡及定理(そきゅうていり)とは、通貨の価値が過去に実物商品と交換できた経験から生まれるという理論です。
しかし、ブテリン氏のイーサリアムは、実物商品との交換の歴史がないにもかかわらず、価値を持つ通貨(仮想通貨)として成り立っています。
コーエン氏は、この点をブテリン氏の革新として高く評価しました。
プルーフ・オブ・ステークへの移行
タバロック氏もブテリン氏の業績を称賛し、「それだけでなく、ヴィタリックはイーサリアムのメカニズム設計において、プルーフ・オブ・ステークへの移行を進め続けている」と述べています。
プルーフ・オブ・ステークとは、仮想通貨の取引を記録する方法で、従来のプルーフ・オブ・ワークよりもエネルギー消費が少ないと言われています。
タバロック氏は、イーサリアムがこの移行を実現したことを「車が動いている間にタイヤを交換するようなもの」と例え、その難しさと成功を強調しました。
ブテリン氏の個性と仮想通貨界への貢献
さらに、タバロック氏はブテリン氏の親しみやすい性格についても言及し、彼を仮想通貨界の知的で好感の持てる代表者として評価しました。
ブテリン氏の仮想通貨への貢献は、ビットコインの匿名の創設者である「サトシ・ナカモト」に次ぐものだとも述べています。
ビットコインは、最も初期の仮想通貨で、現在も多くの人々が使用しています。
タバロック氏は、「もちろんサトシもノーベル賞を受賞すべきだが、彼はすでに亡くなっていると思う」と言及しましたが、コーエン氏は「彼が亡くなっているとは思わない」と反論しています。
サトシ・ナカモトとHBOのドキュメンタリー

さらに、10月8日にHBOが配信したドキュメンタリーでは、ビットコインの創設者「サトシ・ナカモト」の正体がコンピュータ科学者のピーター・トッド氏であると主張しました。
しかし、この主張には多くの疑問が残っています。
仮想通貨コミュニティ全体としては懐疑的な見方が多く、トッド氏自身もその映像制作者の主張を否定しています。
ビットコインの開発者が誰であるかについては、いまだ多くの謎が残っています。
ピーター・トッド氏
仮想通貨およびブロックチェーン技術に精通した著名なコンピュータ科学者であり、特にビットコインの開発とそのセキュリティ(安全性)を向上させるための貢献で知られています。
ビットコインは、世界で初めて登場した暗号資産(デジタル通貨の一種)であり、トッド氏はその仕組みを改善するために数多くの技術的な提案を行いました。
彼が開発した「RBF(Replace-by-Fee)」という手法は、ビットコイン取引のスピードと手数料(取引の際にかかる費用)を調整できる仕組みです。
これにより、取引がよりスムーズに行えるようになりました。
また、トッド氏はブロックチェーン技術全般において、特にスケーラビリティ(システムの拡張性)やプライバシー(個人情報の保護)に関する問題に取り組んできました。
スケーラビリティとは、ブロックチェーンが多くの取引を処理できる能力を指し、仮想通貨の普及において重要な課題です。
プライバシーの面でも、ユーザーの取引情報をより安全に保つための工夫が求められており、トッド氏はその解決策に尽力しています。
ヴィタリック・ブテリン氏がノーベル経済学賞を受賞する可能性

ノーベル賞を受賞する可能性は十分にあります。
現在の経済学の枠組みを広げるという観点から注目されています。
伝統的に、ノーベル経済学賞は、経済理論や実証的な研究を通じて大きな影響を与えた経済学者に授与されてきました。
しかし、ブテリン氏のようなコンピュータ科学者がこの賞を受賞するのは異例です。
とはいえ、ブテリン氏の業績は、貨幣経済の進化における新しい段階を切り開いたものといえます。
彼はイーサリアムを通じて、暗号資産が単なるデジタル通貨ではなく、金融や契約の仕組みを根本的に変える可能性を示しました。
また、従来の通貨理論であるミーゼスの遡及定理を覆すほどの新しい通貨システムを創造したことが評価されています。
遡及定理とは、通貨の価値が過去の実物商品との交換に基づくという考え方ですが、イーサリアムのような仮想通貨は、実物商品に裏付けされていないにもかかわらず、価値を持つようになりました。
さらに、イーサリアムの技術的な進化も、ブテリン氏のノーベル賞受賞の可能性を後押しする要素です。
特に、プルーフ・オブ・ステークへの移行という技術的挑戦を成功させたことは、仮想通貨の持続可能性と効率性に大きく寄与しています。
プルーフ・オブ・ステークとは、仮想通貨の取引をよりエネルギー効率の良い方法で検証する仕組みのことです。
ノーベル経済学賞は、従来の枠組みを超えた貢献も評価されることがあります。
暗号資産が今後、世界経済に与える影響がますます大きくなる中で、ブテリン氏の革新が「経済学」に新たな視点をもたらす存在として、ノーベル賞を受賞する可能性は十分にあります。
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