2025年度の税制改正に向けて、仮想通貨(暗号資産)取引に関する新しい動きが注目されています。
金融庁は、9月30日に税制改正要望を発表し、その中で「資産所得倍増プラン及び資産運用立国の実現」を目指す方針を示しました。
この一環として、仮想通貨が金融資産として取り扱われるべきかどうかという課題を含め、今後の税制のあり方が検討されることになりました。
この要望は、各府省庁から提出され、与党税制調査会や国会での審議を経て最終決定されるもので、現時点ではまだ改正が確定しているわけではありません。
しかし、これまで仮想通貨に関しては主に法人税制の改正が議論されてきた中で、今回は初めて個人の仮想通貨取引に関する課税に言及されています。
仮想通貨取引における税制改正がどのように進むのか、その背景や今後の見通しについて、初心者の方にも理解しやすい形で解説していきます。
仮想通貨とは、ビットコインやイーサリアムといったデジタルな通貨のことです。
この分野が成長する中で、どのような税制が適用されるかは、投資を考えている方々にとって非常に重要なポイントとなります。
損益通算範囲の拡大とは?
公開された文書によると、「金融所得課税の一体化」とは、損益通算(そんえきつうさん)の範囲を広げることを指しています。
損益通算とは、投資などで得た利益と損失を相殺(そうさい)することができる制度です。
たとえば、株式投資で利益が出た一方で、他の投資で損失が出た場合、その損失を利益と相殺することで、全体の税負担を軽くすることができます。
過去の損益通算の対象拡大と現在の課題
2016年には、損益通算の対象が上場株式(証券取引所で売買される株式)だけでなく、特定公社債(特定の国債や地方債など)にも広げられました。
しかし、デリバティブ取引(金融商品の価格に基づく複雑な取引)や、預貯金(銀行などに預けるお金)などは、まだ損益通算の対象に含まれていません。
これにより、投資家がさまざまな金融商品に投資しやすい環境が十分に整備されていないという課題が指摘されています。
金融庁の要望
今回の税制改正要望では、こうした問題を解決するために、損益通算の範囲をさらに広げることが提案されています。
具体的には、デリバティブ取引や預貯金にも損益通算を適用することで、投資家がより多様な金融商品に安心して投資できる環境を整え、家計が成長資金を供給することを促進しようとしています。
このような改正が行われれば、仮想通貨を含む多様な金融商品に投資している方にとって、より柔軟で有利な税制環境が提供される可能性があります。
これは、これから仮想通貨や他の投資を考えている初心者にとっても大きなメリットとなるでしょう。
仮想通貨取引の税率変更の可能性
仮想通貨取引に関する税制について、業界団体や投資家からは、以前から税率の変更を求める声が多く上がっています。
現在、仮想通貨取引で得た利益は「雑所得」として扱われ、最大55%の高い税率が適用されることがあります。
この税率は、特に多額の利益を得た場合に大きな負担となります。
そのため、仮想通貨取引に対しては、一律20%の「申告分離課税」へ変更することが強く求められています。
申告分離課税とは、所得の種類ごとに独立して税率を適用し、他の所得とは分けて申告する仕組みです。
金融庁の今回の対応と業界の期待
金融庁は今回の税制改正要望の中で、仮想通貨取引に係る課税の取り扱いを検討していく必要があると述べています。
これまでは、こうした要望があっても仮想通貨取引の課税方式は変更されてきませんでしたが、今回は「金融所得課税の一体化」が議題に上がっており、仮想通貨取引に対する課税方法の見直しが期待されています。
関連する要望書として、日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、2025年度の暗号資産税制改正を求める要望書を政府に提出しました。
これらの団体は、特に税率の変更が投資環境の整備に重要であると強調しています。
税率変更への3つのポイント
自民党の小倉將信副幹事長は、Web3カンファレンス「WebX」で、申告分離課税への移行を実現するために重要な3つのポイントを挙げました。
- 理論的根拠: 改革が必要な理由を論理的に説明すること。仮想通貨に適用されている高い税率が、投資家の負担になっていることを明確に伝える必要があります。
- 税収予測: 改革によって税収がどのように変わるかを予測し、税収のメリットを示すこと。たとえば、税率を下げることで取引が活発化し、結果的に税収が増える可能性も考えられます。
- 国民の理解: 仮想通貨投資が、一般の人々の資産形成にどう貢献するかを示すこと。仮想通貨が単なる投機対象ではなく、資産形成の手段として役立つことを広く理解してもらうことが重要です。
小倉議員は、分離課税が国が推奨する投資に適用されるものであると指摘しています。
そして、仮想通貨投資が資産形成に役立つものであると認められれば、分離課税の対象になる可能性が高くなることを強調しています。
今回の金融庁の動きが、仮想通貨取引における税率変更にまでつながるかどうかはまだ不透明ですが、これらのポイントを踏まえた議論が今後展開されることで、税制改正の実現に近づくかもしれません。
仮想通貨を始めたいと考えている初心者の方にとっても、この税制改正の行方は重要な関心事となるでしょう。
仮想通貨ETFの解禁に関する議論
今回の税制改正要望の中で、金融庁が「仮想通貨を投資対象となるべき金融資産として取り扱うかどうか」を検討すると記載したことは、日本で仮想通貨ETF(上場投資信託)の解禁にも影響を与える可能性があります。
ETFとは、株式や債券などの資産を組み合わせた投資商品で、株式市場に上場されており、投資家が簡単に売買できる仕組みです。
金融庁長官の慎重な姿勢
金融庁の井藤英樹長官は、9月7日に公開された「ブルームバーグ」のインタビューで、仮想通貨ETFを日本で承認するかどうかについて慎重に検討する必要があるとの考えを示しました。
彼は、投資信託は国民が長期的かつ安定的に資産を増やすための制度であると説明しています。
投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を元に、専門家が運用を行う金融商品で、リスクを分散しながら長期的な資産形成を目指すことが目的です。
仮想通貨が長期投資に適しているか?
井藤氏は、その制度の趣旨に仮想通貨が合致するかについて、「必ずしもそうではないという見方もまだ多いのではないか」と述べています。
仮想通貨はその価格変動が非常に大きく、短期的な利益を狙う投資家が多いことから、長期的な資産形成に適しているかどうかについては慎重な意見が多いのが現状です。
仮想通貨ETFの今後
仮想通貨ETFが日本で解禁されれば、仮想通貨をもっと手軽に投資できる商品として広く普及する可能性があります。
しかし、そのためには仮想通貨が金融資産として安定的に運用できるかどうか、また国民の資産形成に資するものであるかどうかが問われています。
初心者にとっても、この動きは今後の投資戦略に大きな影響を与える可能性があるため、注目しておくべきテーマです。
5年前にビットコインとイーサリアムを購入していたら?
長期投資としての可能性
仮想通貨が長期投資の対象としてどのように機能するのか、5年前にビットコインやイーサリアムを購入していた場合のシナリオを例に考えてみましょう。
2019年9月、ビットコインの価格は約110万円、イーサリアムは1万9千円でした。
それから5年が経過し、2024年にはビットコインは860万円を超えておりイーサリアムも36万円以上の価値を持つようになっています。
このように、仮想通貨市場は過去5年間で大きな成長を遂げました。
もしも5年前にこれらの仮想通貨を購入し、持ち続けていたなら、現在までにビットコインで約8倍、イーサリアムで約18倍ものリターンを得ていたことになります。
仮想通貨の成長とリスク
この事例は、仮想通貨が長期的に見ると大きな成長を遂げてきたことを示しています。
しかし、その間には価格が大幅に上下する「ボラティリティ」と呼ばれる特性がありました。
たとえば、2021年にはビットコインが一時60,000ドルを超える高値をつけた後、大きく値下がりした時期もありました。
このような価格の変動性は、仮想通貨を長期投資の対象として捉える際に、リスクとして考慮すべき重要な要素です。
長期投資としての可能性
それでも、仮想通貨がこの5年間で大きな価値の上昇を見せたことは、長期的な資産形成の手段としての可能性を示唆しています。
特にビットコインやイーサリアムは、その技術的な基盤や広範な利用可能性から、デジタル資産としての価値が認識され始めています。
これらの仮想通貨が、今後も成長を続けるかどうかは不確実ですが、過去の実績を見る限り、長期投資の一部として検討する価値はあると言えるでしょう。
初心者にとっては、仮想通貨の投資は短期的な価格変動に翻弄されることなく、長期的な視点で持ち続けることで、ポテンシャルを最大限に引き出せる可能性があります。
ただし、リスクを理解し、投資額を慎重に決めることが重要です。
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