関税の影響で暗号資産市場はどう変わる?今後の影響

2月3日、暗号資産市場では大きな変動がありました。

なんと22億ドル(日本円で約3410億円)が”精算”されたのです。

ここでいう精算とは、取引の決済が自動的に行われることを指します。

暗号資産の取引では、「レバレッジ取引」と呼ばれる方法がよく使われます。

これは、少ない資金で大きな取引をする方法で、利益が大きくなる可能性がある反面、損失も大きくなるリスクがあります。

レバレッジ取引では、ある一定の価格に達すると自動的に決済(精算)が行われ、損失を防ぐ仕組みがあります。

2月3日、大きな価格変動が起きたことで、多くの投資家がこの自動精算の対象となり、22億ドル分の取引が一気に清算されたのです。

レバレッジ取引

暗号資産の取引では、「レバレッジ取引」という方法がよく使われます。

これは、少ないお金(資金)で大きな取引ができる仕組みです。

たとえば、ゲームセンターで遊ぶときに「100円で1回プレイ」するところ、特別ルールで「100円で5回プレイできる」としたら、たくさん遊べてお得ですよね。

でも、そのかわりに「負けたら一気にゲームオーバーになる」というリスクもあるようなイメージです。

レバレッジ取引では、もし価格が一定のラインまで下がると、自動的に取引が終了(精算)する仕組みがあります。

これは、損失がそれ以上広がらないようにするためです。

まるで、ジェットコースターに乗るときに「安全バー」があるようなもので、大きく動く相場でも一定以上の損をしないようにしてくれる仕組みなんです。

清算後にリスクを取る投資家が利益を得た

精算が終わった後、価格が一時的に下がったことで、「押し目買い」をする投資家が現れました。

「押し目買い」とは、一時的に価格が下がったときに買うことで、安く手に入れて値上がりを待つ投資戦略です。

この結果、最大の暗号資産であるビットコイン(BTC)はなんと20%も上昇しました。

ほかにも、エックス・アール・ピー(XRP)、ドージコイン(DOGE)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)なども3%近く上昇し、イーサリアム(ETH)も4%ほど値上がりしました。

ところが、中国の報復関税で利益が消えた

せっかく上がった価格でしたが、その後すぐに下落してしまいました。

その原因は、中国がアメリカへの”報復関税”を発表したからです。

報復関税とは、相手国が関税をかけたときに、その仕返しとして関税をかけることです。

アメリカが中国からの輸入品に新しい関税をかけると発表したため、中国も同じようにアメリカの輸入品に関税をかけると発表したのです。

関税が増えると、輸入品の価格が上がり、経済全体に影響を与えます。

これによって、投資家の「リスクを取る気持ち(投資意欲)」が下がり、暗号資産の価格も下落してしまいました。

報復関税が発表されると、投資家の投資意欲が下がる理由を簡単に説明すると、「お金を増やすのが難しくなるから」 です。

例えば、パン屋さんを経営していて、小麦粉を海外から仕入れているとします。

ある日、政府が「海外の小麦粉に税金(関税)をかけるよ!」と決めました。

すると、小麦粉の価格が上がって、パンの原材料費も増えてしまいます。

でも、お客さんに「パンの値段を2倍にするね!」とは簡単に言えませんよね。結果として、利益が減ってしまいます。

これと同じように、関税がかかると企業のコストが増えてしまい、利益が減る可能性が出てきます。

そうなると、企業の株価が下がったり、経済全体が不安定になったりして、投資家は「今、投資して大丈夫かな?」と不安になります。

その結果、投資を控える人が増え、暗号資産や株式市場の価格が下がってしまうのです。

つまり、報復関税が発表されると、「企業の儲けが減る → 投資しても利益が出るか分からない → 投資家が慎重になる → 市場全体が冷え込む」 という流れになり、投資意欲が低下するのです。

米中関税問題と暗号資産市場の関係

ハッシュキー・グローバル(HashKey Global)のマネージングディレクター、ベン・エルバズ氏は米中の関税問題が暗号資産市場にどのような影響を与えるのかについて、次のように説明しています。

  • リスク資産への影響
    米中の関税の対立が続くと、投資家は「リスクを取るのは危ないかもしれない」と感じ、暗号資産や株式市場への投資を控える傾向があります。特にこの1年間は、「市場全体が強気(価格が上がりやすい状態)」だったのですが、関税問題によってこの雰囲気が変わるかもしれません。
  • アメリカの政策次第で影響は変わる
    ただし、エルバズ氏は「もしアメリカが暗号資産に対してポジティブな政策(たとえば、税制優遇や規制の緩和)を出せば、関税の影響は一時的なものになる可能性がある」とも述べています。つまり、政府の対応次第で、暗号資産市場が再び盛り上がる可能性もあるのです。

要するに、エルバズ氏は「米中の関税問題は暗号資産市場にマイナスの影響を与えるかもしれないが、アメリカの政策が変われば、その影響は一時的なものになるかもしれない」と考えています。

ベン・エルバズ氏

「ハッシュキー・グローバル(HashKey Global)」という暗号資産(仮想通貨)の取引所でマネージングディレクター(偉い人をしている人です。ハッシュキー・グローバルは香港にある会社で、世界中の人が安全に暗号資産を取引できるような仕組みを作っています。

ビットコインはデジタルゴールド? それともリスク資産?

最近では、ビットコインを「デジタルゴールド」と考える人も増えています。

ゴールド(金)は、経済が不安定なときに価値が下がりにくいため、昔から安全な資産として人気があります。

しかし、今回のようにビットコインの価格が大きく動くと、「やっぱりビットコインはリスク資産(価格が大きく変動する資産)なのでは?」という意見も出てきます。

プレスト・リサーチ(Presto Research)の投資アナリスト、ミン・ジョン氏は「中国の報復関税10%は、株式市場と同じように暗号資産にも影響を与えている」と説明しています。

ミン・ジョン氏

プレスト・リサーチ(Presto Research)という会社で投資アナリストとして働いている方です。彼の主な仕事は、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術が世界の市場にどのような影響を与えるかを研究し、その情報を投資家や一般の人々に分かりやすく伝えることです。

彼は特に、新しく暗号資産の世界に入ってくる人々に情報を提供することに情熱を持っており、暗号資産やブロックチェーン技術がどのように世界の市場を変えるかに強い関心を持っています。

また、最新のブロックチェーンプロジェクトや急速に変化する「ミームコイン」と呼ばれる暗号資産など、将来性の高い資産の研究にも力を入れています。 

要するに、ミン・ジョンさんは、暗号資産やブロックチェーン技術が世界にどのような影響を与えるかを研究し、その知識を多くの人々と共有する専門家です。

今後、暗号資産市場はどうなる?

市場がどう動くかは、まだ分かりません。

ミン・ジョン氏は、「最初の反応は過剰だったかもしれないが、今後も価格の変動(ボラティリティ)が続くだろう」と予想しています。

また、「もし今回の動きが一時的な交渉の一部なら、価格は元に戻る可能性がある。

しかし、もし本格的な貿易戦争が始まるのなら、長期間影響が続くかもしれない」と警戒を呼びかけています。

今回の関税問題は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が「カナダ、メキシコ、中国からの輸入品に課税する」と決めたことがきっかけでした。

これを受けて、2月3日にビットコインをはじめ、株式市場も急落しました。

投資家は、トランプ氏が暗号資産を支持しているかどうかではなく、「関税の影響で経済がどうなるか」に関心が向いている状態です。

安全な投資先としてドル建てのステーブルコインが注目

関税の影響で、投資家は経済の先行きに不安を感じるようになりました。

そのため、安全な投資先として「ステーブルコイン」に注目が集まっています。

ステーブルコインとは、価値が安定している暗号資産のことです。

特に、アメリカドルと価値が連動する”ドル建てのステーブルコイン”は、価格変動が少なく、安全な資産として人気があります。

関税変更後の実施暗号資産市場考察

関税が増えると、企業のコストが増え、経済全体の成長が鈍る 可能性があります。

そうなると、投資家は「今はリスクを取らないほうがいいかも…」と慎重になり、株や暗号資産を売る動きが強くなるかもしれません。

特に、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は「リスク資産(価格が大きく動く投資)」と見られることが多いため、他の投資と一緒に売られる可能性が高い です。

その結果、短期的には暗号資産の価格が下がるかもしれません。

ただし、関税が経済に悪影響を与え、ドルの価値が不安定になった場合、ビットコインが「デジタルゴールド」として注目される可能性 もあります。

ゴールド(金)は昔から「不景気のときに価値が下がりにくい資産」として人気です。

最近では、ビットコインも「デジタル版の金」として見られることが増えてきています。

そのため、もし関税の影響で世界の経済が不安定になれば、投資家がビットコインを買う動きが出る かもしれません。

エキスパートたちは、「アメリカが暗号資産に友好的な政策を打ち出せば、関税の影響は一時的なものになる」と予測しています。

たとえば、アメリカ政府が暗号資産の税制を優遇したり、規制を緩和する ことで、投資家の信頼が回復すれば、市場は再び盛り上がる可能性があります。

今後の予測

短期投資家不安により価格が下がる
中期経済が不安定になり「デジタルゴールド」としてビットコインが買われる
長期政府の暗号資産政策により市場が回復

関税の影響は 短期的にはネガティブな動きが多くなる かもしれませんが、長期的に見れば暗号資産にとってプラスに働く可能性もあります。

今後の政府の動きや市場の変化に注目しましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA