経歴: ドナルド・トランプ(1946年生まれ)はニューヨーク州出身の実業家で、不動産開発会社を父から引き継ぎ、1970年代以降ニューヨークで不動産事業を展開しました。
その後、テレビのリアリティ番組「アプレンティス」のプロデューサー兼司会者として全国的な知名度を得ました。
2015年に米大統領選への出馬を表明し、2016年の選挙で当選して第45代大統領(任期2017~2021年)に就任しました。
2020年の大統領選では敗北しましたが、その後も政界に強い影響力を持ち、現在は2024年の大統領選挙で再選(第2期)を目指しています。
主な支持基盤: トランプ氏の支持者は、統計上「地方在住の白人」かつ「非大学卒(高等教育を受けていない)」層が顕著であると指摘されています。
必ずしも失業者や貧困層ばかりではなく、経済的に中間層以上の人々も多く含まれます。
彼らは保守的な価値観を持つ傾向があり、「反エスタブリッシュメント(既存支配層への反感)」や「移民や中絶への反対」「銃規制反対」「キリスト教的価値観の重視」などの信条を共有しています。
実際、トランプ支持者の典型像は「地方在住の白人男性のブルーカラー労働者」であると報じられてきました。
(ブルーカラー労働者とは、工場・建設・運輸などの「肉体労働」が中心の仕事をする人たちのことを指します。作業服(ツナギや作業着)などを着て働くことが多いことから、「ブルー(青い)カラー(襟)」と呼ばれるよ)
こうした層は、グローバリゼーションや多様化に伴う社会の変化に不満を抱き、トランプ氏の過激な言動や「米国第一主義」的メッセージに強く共鳴しています。
また福音派キリスト教徒など宗教保守層や、既存政治への不信感を持つ層もトランプ氏を熱烈に支持しており、トランプ氏は2016年の初当選以来、一貫して共和党のコア支持層から高い忠誠を得ています。
第1期トランプ政権(2017~2021年)の主要実績(経済・IT分野中心)
経済分野の成果と課題
好調な雇用と成長: トランプ政権の前半は景気拡大が続き、2019年には失業率が3.5%と約50年ぶりの低水準を記録しました。
インフレ率も概ね米連邦準備制度理事会(FRB)の目標2%前後に収まり、株式市場(S&P500指数)は史上最高値を更新するなど、市場も活況を呈しました。
こうした好景気の一因として、政権発足直後に実施された大型減税と規制緩和が挙げられます。2017年末に成立した「減税・雇用法」(Tax Cuts and Jobs Act)は、法人税率を35%から21%へ大幅に引き下げ、個人所得税も全所得層で減税する歴史的な税制改革でした。
この減税により企業収益が増大し、設備投資が促進されたほか、個人消費も下支えされました。
また、トランプ政権は「1規制導入につき2規制撤廃」を掲げてビジネス環境の改善を図り、エネルギー・環境規制の緩和や製造業への規制撤廃を進めたことが企業の景況感を押し上げた面もあります。
これらの政策の結果、2017~2019年の実質GDP成長率は平均2.67%と堅調で(※2020年のコロナ禍を除く平均値)、トランプ氏自身も「史上最高の経済」と誇るほど、一時的には力強い経済実績を残しました。
貿易政策と産業保護
トランプ政権は「アメリカ第一の貿易政策」を掲げ、製造業の復活と貿易赤字削減を目指しました。
その象徴が対中貿易戦争で、2018年以降、中国からの輸入品に最大25%の高関税を次々と課したことです。
鉄鋼や電子機器など広範な中国製品が対象となり、中国も報復関税(大豆や自動車など)で応酬しました。
関税により中国製品価格を押し上げ米国内産業を保護する狙いでしたが、その副作用として米企業の調達コスト上昇や消費者物価の上昇を招いています。
米議会予算局(CBO)は、コロナ禍がなかった場合でも関税措置により2020年には米国世帯あたり平均1,277ドルの負担増になっていたと試算しています。
またEUや日本など同盟国にも鉄鋼・アルミ関税を課すなど強硬姿勢を取り、自由貿易を重んじる国際秩序に一石を投じました。
もっともトランプ政権はこれを交渉材料として活用し、カナダ・メキシコとのNAFTA再交渉では新協定(USMCA)を成立させ、日米貿易交渉でも農産品市場の一部開放を日本から引き出す成果を上げています。
また各国企業は関税回避のため対米生産投資を拡大し、実際に2017~2021年に日本は対米直接投資額が世界首位となるなど、米国内への製造業回帰の動きも見られました。
このようにトランプ政権の産業保護策は一定の効果を持ち、2017~2019年だけで製造業雇用を約46.1万件増加させる一因となりました。
しかし課題も顕著です。まず財政赤字の拡大が挙げられます。
大型減税の効果で経済成長は加速したものの、減税による歳入減は補填されず赤字が膨張しました。
2018会計年度の連邦財政赤字は7,790億ドルと前年度から大幅に悪化し、2019年度は9,840億ドルに達しています。
減税前の予測と比べると年間2千億ドル以上も赤字が増えた計算で、減税が“自らを賄う(景気拡大で税収増)”との政権主張は実現しませんでした。
対中関税による米企業への補助(金農家への補填など)や歳出増もあり、パンデミック前から財政悪化が進んだのです。
さらに2020年には新型コロナウイルスの流行で経済が急落し、失業率は一時14.7%に急上昇、2020年通年のGDP成長率は-3.4%と大恐慌以来の落ち込みとなりました。
政府は2.2兆ドル規模の緊急対策(CARES法)で景気下支えを図りましたが、結果的にトランプ氏は現代の米大統領として初めて就任時より雇用者数が減少した状態で任期を終えることになりました(在任中の純減270万件)。
このようにトランプ政権の経済実績は、2020年までは低失業率・高成長という成功が際立つ一方、対中関税や財政悪化など長期的リスクを孕み、最終年度にはパンデミックにより成果が大きく損なわれたと言えます。
IT・技術分野の成果と問題点
技術革新の推進: トランプ政権は経済政策と連動してIT・科学技術分野の競争力強化にも取り組みました。
AI(人工知能)や5G、量子コンピューティングといった先端技術を国家戦略の優先事項に初めて位置付け、これら分野への研究開発投資を推進したのは大きな成果です。
2019年には「アメリカAIイニシアチブ」を立ち上げ、連邦政府としてAI研究への資金投入や政府データの民間開放などを図りました。
また2018年には「国家量子イニシアチブ法」に署名して官民の量子技術研究を促進する枠組みを整え、AI・量子分野の研究拠点に10億ドルを投じる計画も発表しています。
通信インフラでは第5世代移動通信(5G)のリードを目指し、100MHz幅のミッドバンド帯周波数を民間利用に開放するなど、農村部へのブロードバンド整備や5G展開に向けた取り組みも行われました。
宇宙開発では宇宙軍(スペースフォース)の創設やNASAの有人月探査計画(アルテミス計画)推進にも関与し、民間宇宙産業の活性化を後押ししました。こうした政策の結果、米国はAI・量子・宇宙などで国際競争をリードする姿勢を明確にし、中国などとの技術覇権争いに備える体制を整え始めました。
対中ハイテク依存への対処
トランプ政権のIT政策でもっとも際立つのは、中国製ハイテク製品の排除とサプライチェーンの見直しです。
国家安全保障の観点から、中国の通信機器大手Huawei(華為技術)やZTEをはじめとする企業をエンティティリスト(取引禁止リスト)に追加し、米企業がこれら中国企業に先端半導体などを輸出することを厳格に制限しました。
また、同盟国にも働きかけてHuawei製品を5Gネットワークから排除するよう促し、英国や日本など多くの国が追随しました。
この結果、中国企業の世界的な台頭に一定の歯止めをかけ、米国および同盟国の通信インフラの安全保障を高めたと評価できます。
さらに、2020年には中国発のSNSアプリ「TikTok」や「WeChat」の米国内使用禁止を試みる(※最終的に裁判所が差し止め)など、データ安全保障の観点からも対中強硬策を打ち出しました。
ドローンなど他の分野でも中国製品の政府調達排除を進めるなど(内務省が中国製ドローンの使用停止)、IT分野での対中依存低減がトランプ政権期に一気に加速しました。
これらの措置は米国内にサプライチェーンを呼び戻す契機となり、例えば台湾TSMC社が米国に半導体工場建設を決めるなどの動きにも繋がっています。
IT分野の課題
一方でトランプ政権のIT政策には混乱も伴いました。
対中制裁は安全保障上の必要性があった反面、米国企業にも打撃を与えています。
Huawei制裁で同社に半導体を販売できなくなった米国のチップメーカーは収益減に直面し、農村部にHuawei製通信設備を導入していた米地方通信会社は代替調達に苦慮しました。
またTikTok禁止措置は法的整備が不十分で裁判所に差し止められる混乱を招き、結局トランプ氏自身も「TikTokの禁止計画はもはやない」と発言するに至りました。
さらに、国内のIT業界との軋轢も顕在化しました。トランプ氏はSNS上で度重なる過激発言を行い、Twitter社(当時)から投稿に警告ラベルを貼付けられるといった摩擦が生じ、ついには任期末に同社からアカウント停止措置を受けました。
これに反発したトランプ氏はSNS企業の発言規制を問題視し、通信品位法230条の撤廃を主張するなどITプラットフォームへの規制強化を試みましたが、立法には至りませんでした。
また、連邦通信委員会(FCC)が2017年にネット中立性規則を撤廃したことも物議を醸しました。
この撤廃はインターネット・サービス・プロバイダーの規制緩和として企業側には歓迎されましたが、利用者の権利や公正なインターネット利用に対する懸念から強い批判を受け、バイデン政権下で覆されるなど政策の持続性にも課題を残しています。
総じて、トランプ政権のIT政策は技術開発の推進と対中技術覇権への対抗という戦略的意義を持ちながらも、国内外で混乱や反発を招いた面があり、長期的課題として産業界との調整や法整備が不十分だった点が指摘できます。
トランプ氏が掲げる第2期政権の政策目標
2024年の大統領選に向け、トランプ氏は再び大統領に返り咲いた場合の政策ビジョンを公表しています。
その骨子は第1期政権から大きく変わらず、「減税と低金利による経済成長」「強硬な通商・対中政策」「規制緩和とエネルギー自給」「移民抑制による雇用確保」そして「技術革新の推進」です。以下、経済政策とIT政策を中心に、第2期に掲げる主な公約を詳述します。
経済政策(減税、産業保護、雇用政策)
減税と金融緩和
トランプ氏は自身の経済ビジョン「トランプノミクス」の要として「低課税と低金利」を挙げています。
これは企業や個人の活力を最大化し、米国内への投資と事業拡大を促すとの考えです。
「事業を成し遂げ、ビジネスを米国に回帰させる強大なインセンティブになる」と本人も述べており、第2期でも2017年の減税策を延長・拡大する方針です。
具体的には2017年減税の恒久化に加え、中間所得層向けの追加減税や、製造業に対する法人税率15%への引き下げを公約しています。
さらに給与所得者の残業代やチップ、年金受給額に対する税軽減策まで提案しており、大胆な減税パッケージで景気刺激を図る構えです。
ただし試算ではこれらの減税措置により10年間で5~11兆ドルもの歳入減(財政赤字拡大)が見込まれており、財政健全性より景気優先の姿勢が鮮明です。
一方の金融政策について大統領に直接の権限はありませんが、トランプ氏はFRBに対し一貫して低金利政策を求めると見られます。
実際、現職のパウエルFRB議長に不満を示し交代も示唆するなど(Bloomberg報道による)、低金利を維持させる人事・発言で圧力をかけ、金利面でも景気下支えを狙うでしょう。
産業保護と通商政策
第2期のトランプ通商政策は、さらに強硬な保護主義に傾くと予想されています。
トランプ氏自身、「関税こそ賢明な施策だ。自分が再任すればこれを一段と推し進める」と明言しており、具体策として全ての輸入品に一律関税を課す構想を掲げました。
その内容は「中国からの輸入品に追加関税60~100%」「その他の国からの輸入品にも一律10%(最大20%とも)関税を課す」というものです。
これは前例のない包括的関税で、事実上の「輸入税」として米国市場を守る狙いです。
トランプ氏は高関税をテコに各国との再交渉を迫り、「関税を課せば敵対国は撤廃を嘆願してくる。驚くほど有効だ」と豪語しています。
例えば、メキシコやカナダに対しては不法移民対策を理由に全品目25%関税発動を示唆して譲歩を引き出すなど、交渉術としての関税カードを多用すると見られます。
このような強硬策に対し、ウォール街の金融機関は「トランプ再選で保護主義的通商政策が強まればインフレ圧力となる」と警告しており、米国内でも物価上昇への懸念があります。
実際、独立系シンクタンクの試算では提案されている関税措置が実施されれば該当商品の価格が2~3%上昇し、米国世帯当たり年1,200ドル以上の負担増になるとの予測もあります。
それでもトランプ氏は貿易赤字是正と製造業復興を最優先に掲げ、必要なら同盟国にも容赦なく圧力をかけると示唆しています。
加えて「メキシコ国境の壁」の建設継続や、不法移民への厳格対処(大量の不法移民送還や雇用主への罰則強化)も公約しており、安価な移民労働力の流入を抑えることで米国人雇用を保護する考えです。
しかし専門家は、大規模な移民排除は人道上の問題のみならず人手不足による経済成長鈍化を招くと指摘しており、仮に強行すれば2025年のGDP成長率が0.5ポイント押し下げられるとの試算もあります。
雇用創出策
トランプ氏は「製造業の米国回帰」による雇用創出を引き続き重視しています。
彼は第1期で掲げた「ラストベルト(工業地帯)の工場再生」を未完の課題と捉えており、第2期では関税のみならず規制緩和やインフラ投資で企業に国内立地を促す見通しです。
例えば、環境規制の一層の緩和によって製造業の負担を軽減し、新規工場建設を容易にすることや、大型インフラ法案を成立させ高速道路・橋梁・通信網の整備により建設・製造部門の雇用を創出することなどが考えられます(第1期ではインフラ法案は成立しませんでしたが、第2期は議会与党の協力次第で推進の可能性があります)。
またエネルギー政策では化石燃料の増産(石油・天然ガスの掘削拡大)を公言しており、エネルギー産業での雇用増とガソリン価格低下による消費者支援を図るでしょう。
移民規制も雇用政策の一環で、不法移民の雇用を取り締まることで低技能労働市場における米国人雇用機会を守ると主張しています。
ただし移民労働の制限は農業やサービス業の人手不足を悪化させ、移民大幅削減は2028年までに米国製品価格を9.1%押し上げるとの指摘もあります。
このようにトランプ氏の雇用政策は保護主義色が強く、一部では景気や消費者に副作用を及ぼすリスクと表裏一体です。
IT政策(技術革新、対中依存排除、規制緩和 など)
技術革新への投資
経済競争力の鍵を握るIT・先端技術分野では、トランプ氏は引き続き「米国の技術的優位の確保」を掲げています。
第2期公約には、AI・量子・先端通信への投資拡大や、大胆な技術プロジェクトが含まれます。
例えばトランプ氏は米国内に「未来都市」を建設するというビジョンを示し、連邦政府の未開発地に最大10箇所の「フリーダム・シティ(自由都市)」を新設して先端技術の実証拠点とする構想を発表しました。
これら都市には空飛ぶクルマ(垂直離着陸型の飛行自動車)など最新モビリティを導入し、まるで「ジェットソン(1960年代の未来アニメ)」のような近未来都市を現実にする計画です。
この「フリーダム・シティ」構想は「American Quantum Leap(アメリカの量子的飛躍)」と銘打たれており、生活水準を飛躍的に向上させる壮大なプロジェクトとして位置付けられています。
また、「中国からの輸入を断ち切って産業のハブを国内に作る」とも述べており、技術革新と産業政策を組み合わせて国内製造拠点(産業のハイブ)を育成する考えです。
この他にも、5G・6G通信や半導体の研究開発を政府主導で強化し、宇宙開発や軍事技術でも他国に先んじる戦略をとるでしょう。
トランプ氏は第1期に創設した宇宙軍を拡充し、月・火星探査への民間参画を促すとも述べています(いわゆる「宇宙開発の民間開放」路線)。
さらに近年話題の暗号資産(仮想通貨)業界にも友好的で、「クリプト(暗号資産)産業の成長を促す」と明言しており、ブロックチェーン技術やフィンテック分野の発展にも前向きです。
総じて第2期のIT・技術政策は、国家主導で大規模プロジェクトや未来技術への投資を行い、米国を技術革新の最前線に位置づけ続ける**ことが中心になると考えられます。
対中技術依存からの脱却: トランプ氏は再選後も中国への強硬姿勢を一貫させると見られます。
第1期で着手した中国ハイテク排除策をさらに推し進め、戦略物資・ハイテク製品のサプライチェーンから中国を完全に切り離すことを目指すでしょう。
具体策としては、米国内で使用される通信機器・半導体・電気自動車用電池など重要部品に対し、中国製または中国企業製が含まれる場合に追加関税・規制を課すことや、同盟国にも同様の措置を求めることなどが挙げられます。
トランプ氏は「バイデン政権も対中強硬策(半導体輸出規制など)に転じたのは、中国の脅威に対する自分の認識が正しかった証左だ」と主張しており、欧州の同盟国などにも中国排除の圧力をかける構えです。
例えば米国産品の購入が少ない国には一律関税を課すことで是正を迫るといった発言は、事実上中国だけでなく各国に対する通商圧力のカードとなっています。
IT分野でも、中国企業が関与するソフトウェアやクラウドサービスについて政府調達からの排除や利用禁止措置を拡大する可能性があります。
さらに、米国で事業展開するIT企業に対しても中国との関係開示を求め、安全保障上問題があれば業務停止など厳しい対応を取るかもしれません。
トランプ氏の目標は「重要産業における対中依存度ゼロ」であり、半導体製造装置やレアアース供給などで日本や欧州と協力しながら中国抜きの供給網を構築するでしょう。
もっとも一部では軟化の兆しもあります。
例えば第1期で問題視したTikTokについて、最近のインタビューでは「もはや禁止は計画していない」と語っており、政治的コストの高い措置には慎重になる可能性もあります。
いずれにせよ、第2期トランプ政権が発足すれば米中のテクノロジー分断は一層進展し、「経済のブロック化(米国陣営 vs 中国陣営)」が深まることは避けられないと見られます。
規制緩和とビッグテックへの対応
トランプ氏は「小さな政府」を標榜しており、第2期でもIT業界における過剰な規制の撤廃を進めると予想されます。
例えば、新興技術(自動運転車、ドローン、遺伝子編集など)の社会実装を阻む既存規制を見直し、実証実験の促進や承認手続きの簡素化を図るでしょう。
またスタートアップ企業への規制緩和や支援策も考えられます。一方で、GAFAと呼ばれる巨大IT企業(ビッグテック)への締め付けもトランプ氏の政策リストに含まれています。
彼は第1期終盤から「大手ハイテク企業は権力を持ちすぎており、保守派言論を抑圧している」と批判し続けており、第2期ではこれを是正する動きを強める可能性があります。
具体的には、反トラスト法(独占禁止法)によるビッグテックの解体や、SNS企業にプラットフォーム上の発言内容に対する責任を負わせる法改正(通信品位法230条の見直し)などが議論されるでしょう。
トランプ氏はかねてからAmazonやFacebook(現Meta)、Googleなどに対し批判的で、メディア事業への進出や競争行為を問題視してきました。
第2期では司法省やFTC(連邦取引委員会)に保守系人材を配置し、これら企業への規制を強化するとの観測があります。
ただし共和党内でも経済界寄りの議員は規制強化に慎重なため、実現にはハードルもあります。
それでも「ビッグテックを放任せず、消費者の自由と言論の自由を守る」という名目で、何らかの形でIT業界再編を促す圧力がかかる可能性が高いでしょう。
第2期トランプ政権の日本経済への影響分析
トランプ氏の再登板は、日本企業にとってプラスとマイナスの両面をもたらします。
ここでは(1)米中関係の緊張下における日本企業の立場、(2)貿易・関税政策の変化が日本企業に与える影響、(3)米国市場への参入障壁とチャンスという観点から分析します。
米中関係緊張による日本企業の立場
トランプ第2期政権が誕生した場合、米中対立の激化は避けられません。米国が中国への大規模関税や技術輸出規制を強めれば、日本企業もサプライチェーンの再構築を迫られるでしょう。
既に多くの日本企業は米中摩擦に備え、中国以外の生産拠点(東南アジアや北米)への分散を進めていますが、トランプ氏の追加関税などが実現すればその動きが一段と加速すると予想されます。
専門家は「日本企業にはサプライチェーンの一層の多様化が求められる」と指摘しており、部品調達や組立拠点を中国以外に移す検討が必要です。
特に懸念されるのは、貿易制限の新たな基準として『企業の国籍』が考慮される可能性です。
米国が「中国資本の企業が海外(例:メキシコ)で生産した製品も中国製とみなして制限する」措置を取る可能性が示唆されており、そうなれば日本企業でもサプライチェーン上に中国企業製品が含まれていれば影響を受ける恐れがあります。
例えば、中国企業が製造する部品を使っているだけで米国向け製品が関税対象になる事態も考えられ、サプライチェーン全体から中国要素を排除する必要に迫られるかもしれません。
もっとも、米中対立の激化は日本企業に「漁夫の利」の機会ももたらします。
米国が中国企業を締め出した市場では、日本企業が代替供給者として存在感を高める余地があります。
典型例が通信インフラ分野で、Huawei排除後に日本のNECや富士通が5G通信機器の国際市場で脚光を浴びました。
今後も半導体製造装置や電気自動車電池素材などで中国企業が米市場から締め出されれば、高い技術力を持つ日本企業がその穴を埋めるチャンスがあります。
また、米国主導の「サプライチェーン同盟」(いわゆるフレンドショアリング)に日本も参画し、米欧と連携して戦略物資の供給網構築を図る動きが進めば、日本企業は信頼できるパートナーとして重視されるでしょう。
事実、2023年には半導体先端技術の対中輸出管理で日米オランダが協調するなど、日本は米側陣営の一員として位置づけられています。
トランプ氏再選後は、この流れが一段と強まり、「中国か米国か」二者択一の圧力が日本企業にもかかる可能性があります。日本としては経済安全保障の観点から米国との協調を深めつつ、中国市場も無視できない板挟み状況が続くと考えられます。
総じて米中緊張下では、日本企業はリスクヘッジのための生産拠点・調達先の分散化を一層進め、米国との技術協力を強化する一方、中国市場依存を減らすバランス戦略が必要となるでしょう。
貿易・関税政策の変更が日本企業に与える影響
トランプ氏の通商強硬策は、日本企業にも直接的な影響を及ぼします。特に懸念されるのが包括的な関税引き上げです。
仮に全輸入品に一律10%(最大20%)関税が課せられれば、日本から米国への輸出製品も例外ではなく、自動車・自動車部品、電子機器、機械製品など幅広い品目で価格競争力の低下を招きます。
日本車はこれまで為替や現地生産で対応してきましたが、追加関税が恒常化すれば米国内での販売価格上昇は避けられず、販売台数の減少や現地雇用への影響も懸念されます。
実際、トランプ氏は第1期にも日本車輸入に最大25%の関税を検討し日本政府を慌てさせました。
その際は米日貿易交渉で日本側が農産物市場を譲歩する形で自動車関税を回避しましたが、第2期でも同様の圧力がかかる可能性があります。
加えて、為替問題も蒸し返されるかもしれません。
トランプ氏は以前から円安を批判し、日本を名指しで「自国通貨を安くして米国を不利にしている」と非難したことがあります。
今後ドル高・円安が進行すれば、為替操作国認定など日本への圧力カードを使い、為替条項付きの協定締結を迫る可能性も指摘されています。
一方、トランプ通商政策は日本企業に有利に働く側面もあります。
例えば、トランプ氏が掲げる関税策の狙いの一つに「米国に工場を建てれば関税を回避できる」という誘引効果があります。実際、前回政権時にはトヨタ自動車やソニーなど多くの日本企業が米国への追加投資を発表し、現地生産を拡充する動きを見せました。
トランプ氏自身もそうした発表を歓迎しTwitterで度々言及していました。
つまり、日本企業が米国内で生産・雇用を増やすならば、むしろ厚遇される可能性があります。
統計的にも過去5年間で日本は対米投資額世界一となっており、対米工場進出が活発でした。
第2期トランプ政権下でも日本企業は現地生産化を進めることで関税リスクを低減でき、市場アクセスを維持できます。
また、日米が2019年に締結した日米貿易協定(農産品とデジタル分野の部分協定)は存続すると見られ、トランプ氏は日本との全面的なFTAには消極的なものの、日本に対しては中国ほど厳しい態度を取らないとの見方もあります(実際、再選後直ちに日本企業を直接標的にする可能性は低いとの分析もあります)。
もっとも油断は禁物で、トランプ氏は貿易赤字の大きい相手国には容赦なく是正を迫るため、日本が対米黒字を拡大させれば矛先が向くでしょう。
対米黒字の大半を占める自動車分野で、燃費規制緩和など米国市場が拡大すれば日本メーカーには追い風となる一方、「もっと米国で造れ」との圧が強まるジレンマもあります。
また、トランプ通商政策の変更で注目すべきは、地域貿易協定や国際ルールへの姿勢です。
トランプ氏は第1期でTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から離脱し、WTO(世界貿易機関)の紛争解決機能を事実上停止させるなど多国間体制を軽視しました。
第2期でもこの傾向は続くと見られ、日本企業にとっては国際ルールの不安定化というリスクとなります。
WTOを通じた紛争解決が期待できず、米国が二国間交渉で力を行使する状況では、日本企業は日本政府による外交交渉力に頼る部分が大きくなります。
例えば突然の規制変更や関税引き上げに対し、多国間協調でなく個別協議で解決を図らねばならず、対応コストが増すでしょう。
一方で日本にとって追い風となり得るのは、トランプ氏の政策が中国や欧州との対立を深め、日本との関係相対的強化に繋がるケースです。
米欧が貿易摩擦を起こす場合、日本企業は欧州企業に比べ米国市場で有利になる可能性があります。
また米英がFTAを結ぶ動きがあれば、日本もTPPをてこに米国との貿易関係を再構築する余地が出るかもしれません。
総じて、トランプ氏の貿易政策変更は日本企業に短期的苦境(関税コスト増)をもたらす一方、戦略次第では現地生産拡大や代替需要取り込みといった形での活路もあり、日本企業は柔軟な戦略対応が求められます。
米国市場への参入障壁とチャンス
参入障壁(リスク)
トランプ第2期政権下では、海外企業に対する米国市場の参入障壁が高まる懸念があります。まず関税が恒常化すれば前述の通り直接的な価格障壁となります。
さらに「バイ・アメリカン(Buy American)」政策の徹底が予想され、連邦政府や公共事業で米国製品・米国企業を優先する規則が一段と強化されるでしょう。
第1期でもトランプ氏は連邦調達で米国製部品比率の引き上げを指示し、日本企業は軍需品やインフラ案件への参入で不利になりました。
第2期ではインフラ投資やエネルギー開発案件が実施されても、日本企業が直接参画するには現地企業との合弁や現地生産品の調達が必要になる可能性が高いです。
また規制面でも、食品・医薬品の認可基準で米国独自路線を強めたり、外国企業による米国内のデータ取扱いを制限したりといった措置が取られれば、日本企業には非関税障壁となります。
安全保障面では、米国企業による日系企業からの調達が忌避されるリスクもあります。
例えば5G関連で中国と協力関係のある企業とは取引しない、などのガイドラインが拡大解釈されると、日本企業であっても連座的に締め出される可能性も否定できません。
また人の移動の面でも、トランプ氏は高技能者ビザ(H-1B)制限など移民政策を硬直化させる公約を掲げています。
これにより日本企業が専門人材を本社から米国拠点に派遣することが難しくなったり、現地採用で国際人材を確保しにくくなったりする懸念があります。
加えて、トランプ氏の政策は一貫性に欠け急変しうるとの指摘も重要です。彼の意思決定は時に突然で、市場や企業の予見可能性を損ないます。
経営者にとって最大のリスクは不確実性であり、トランプ政権下では常に政策急転への備えを強いられると言えます。
チャンス(機会)
他方、トランプ再選は日本企業にとっていくつかのビジネスチャンスももたらします。第一に、米国経済の減税・景気刺激による需要拡大です。
大幅減税や歳出拡大で米経済が過熱気味に成長すれば、自動車や機械など耐久財への需要も増え、日本企業の製品販売が伸びる可能性があります。
特にインフラ投資が実現すれば建設機械や素材、鉄道車両など日本が強みを持つ分野で商機が期待できます。
第二に、エネルギー・資源分野です。
トランプ氏のエネルギー政策は化石燃料推進ですが、これに伴いLNG(液化天然ガス)や石油の生産が拡大すれば、日本の商社やプラントメーカーが関連プロジェクトに参画できるでしょう。
また原子力発電の推進にも前向きで、米国内で原発や小型モジュール炉の新設が議論されれば、日本の重工業メーカーにも受注のチャンスが生まれます。
第三に、防衛産業・安全保障分野です。
トランプ氏は同盟国に防衛費負担増を要求する一方、米軍備増強にも意欲を示しています。
米国防予算が増え最新兵器の開発・調達が増加すれば、日本の防衛関連企業も部品供給や技術協力でビジネス機会を得られます。
特に日米の安全保障協力が進めば、ミサイル防衛や宇宙・サイバー分野で共同プロジェクトが発足し、日本企業が参画する可能性があります。
第四に、米国内のイノベーションエコシステムへの参画です。
トランプ政権は米国内の技術開発を重視するため、日本企業も現地に研究開発拠点を置きやすくなります。
例えばシリコンバレーのスタートアップへの投資や提携を通じて、日本企業が米国の技術革新の波に乗ることは大いに可能です。規制緩和で実証実験がしやすくなれば、日本発技術を米国で試験展開する場も広がるでしょう。
さらに、トランプ氏が強調する産業の国内回帰は、裏を返せば「対米投資へのインセンティブ」とも言えます。
各州政府も競って税優遇など誘致策を講じるため、日本企業はこれを活用して有利な条件で米国に生産拠点や開発拠点を設けることができます。
結果的に米国市場で長期的プレゼンスを確保し、現地雇用創出企業として評価を高めることができるでしょう。
以上のように、トランプ第2期の米国市場は日本企業にとって**「ハイリスク・ハイリターン」**の様相を呈します。
保護主義的障壁に直面しつつも、それに対応する戦略(現地生産・投資拡大や同盟協力の活用)次第で新たな成長機会を掴むことも可能です。
日本企業は米国政治動向を注視し、機敏に戦略を調整する力量が求められるでしょう。
トランプ氏が多くの批判を受ける理由と背景
トランプ氏はその登場以来、米国内外で賞賛と批判が極端に分かれる政治指導者です。
特に批判的な声は政敵の民主党や有識者、メディア、欧州を中心とした同盟国首脳などから数多く上がっています。
その主な理由と背景を、(1)言動や振る舞いの問題、(2)政策上の論争点、(3)民主主義への懸念、(4)国際秩序との摩擦の観点から包括的に解説します。
1. 過激な言動と社会的分断
トランプ氏は歯に衣着せぬ物言いで知られますが、その過激で攻撃的なレトリックは国内外で物議を醸しました。
例えば少数派や移民への差別的発言(中米からの移民を「強姦魔」呼ばわり、イスラム圏出身者の入国を禁止する「ムスリム・バン」提案など)、政敵や批判者への個人攻撃(主要メディアを「人民の敵」呼ばわりし、女性政治家を容姿で嘲笑するなど)、さらには同盟国指導者に対しても侮辱的な言葉を投げかける場面がありました。
こうした言動は国内の人種・宗教間の亀裂を深め、トランプ政権期には白人至上主義的なグループが台頭したり、社会の分断が顕在化しました。
特に2017年のシャーロッツビルで白人至上主義者と抗議者が衝突した際、トランプ氏が「両側に非常に良い人々がいた」とコメントしたことは大きな批判を招び、人種差別を容認しているとの非難が集中しました。
またSNS上でもデマや陰謀論を拡散しかねない発言を繰り返し、新型コロナ禍では消毒液注射が有効と誤解させるような発言まで行い問題となりました。
結果的にトランプ氏の過剰な自己アピールと対立煽動的なスタイルは、「アメリカ社会の対立を煽り民主主義の健全な議論を損なっている」と多くの批判を浴びたのです。
2. 政策に関する論争と価値観の対立
トランプ氏の推進した政策の中には、人権や国際協調の観点から強い反発を受けたものが少なくありません。代表例が移民政策です。
彼は不法移民への厳格対応を掲げ、中南米からの不法入国者を抑止するため幼児を含む子供と親を強制的に引き離す措置(いわゆる「親子分離政策」)を実施しました。
この非人道的な手法には米国内のみならず国連や人権団体も激しく抗議し、「米国の良心に反する」と糾弾されました。
また7か国のイスラム圏からの入国を禁止した大統領令(通称「トラベルバン」)は宗教差別との批判を受け全米各地で抗議デモが発生しました。
環境政策でも、パリ協定からの離脱や環境規制緩和策は世界的な潮流に逆行するとして非難されました。
トランプ氏が「気候変動は中国がでっち上げたデマだ」と発言したことや、気候変動対策に消極的だった姿勢により、NATOなど西側同盟内でさえ「米国は地球環境問題への責任を放棄した」との声が上がりました。
また医療政策では、オバマ前政権の医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃を試み何百万人もの国民が保険を失うリスクを招いたこと、銃乱射事件が相次いでも銃規制強化に否定的だったことなども国内世論の賛否を二分しました。
外交面では後述の国際秩序との摩擦に加え、北朝鮮やロシアの権威主義的リーダーを称賛するような言動(プーチン大統領を「尊敬すべき強い指導者」と評し、金正恩委員長とは「ラブレターを交わした」と自慢)も、「独裁者に媚びている」として民主主義陣営から強い違和感と批判を招きました。
このようにトランプ氏の政策は伝統的なリベラル派や同盟諸国の価値観としばしば衝突し、多方面から反発を受けたのです。
3. 民主主義・法治への懸念
トランプ氏への最大級の批判理由は、アメリカの民主主義や法の支配を脅かす言動です。
彼は大統領在任中から司法や立法府など自らの権力を制限する機関に攻撃的でした。
例えば自分に批判的な裁判官を「いわゆる判事」と揶揄し司法の正統性を貶めたり、FBIや司法省が自身や側近の捜査を進めると「魔女狩りだ」「連中は腐敗している」と非難しました。
伝統的に大統領の政治的中立が求められる司法省に対しても、トランプ氏は繰り返し介入を試み、側近への捜査中止をほのめかす発言や、支持者に有利な裁判所判決を公然と要求するなど司法の独立を侵す行為が見られました。
また議会に召喚された側近に証言拒否を指示するなど立法府への協力も拒み、行政権力の肥大化(checks and balancesの無視)を指摘されました。
さらにトランプ氏は報道の自由を軽視し、大統領記者会見で気に入らない記者を罵倒して退場させたり、主要報道機関の取材パスを一時剥奪するなど、権力者への批判を封じる姿勢を見せました。こうした一連の行動に対し、専門家や識者は「トランプ政権は権威主義体制に傾きつつある。民主主義の危険水域だ」と警鐘を鳴らしています。
実際、トランプ氏が選挙結果を受け入れない姿勢を示した2020年大統領選後の混乱は、米民主主義に対する最大の打撃となりました。
彼は選挙での敗北が確実になると「選挙は不正に盗まれた」と根拠のない主張を展開し、自身の支持者に戦うよう煽動しました。
その結果が2021年1月6日の連邦議会襲撃事件であり、トランプ支持者の一団が議会に乱入して死者を出す事態となりました。
トランプ氏は暴徒を直ちに制止せず結果的に事件を助長したと見なされ、下院で「反乱扇動」により史上初の2度目の弾劾訴追を受けました。
この未遂クーデターとも呼ばれる出来事は国内外に衝撃を与え、「トランプ氏は民主主義そのものへの脅威」と強く批判される決定打となりました。
現在もトランプ氏は2020年選挙結果を認めず「自分が正当な大統領」と主張しており、民主主義のルールを受け入れない姿勢に対して共和党内の一部からも懸念が出ています。
さらにトランプ氏は第2期に向けて「自分に反対する官僚を一掃し、政府を完全に掌握する」と取れる発言(2025年に「政府効率化局(DOGE)を設置」云々のシナリオ)も報じられ、権力の私物化・強権化への警戒感が高まっています。
要するに、トランプ氏の行動様式は合衆国憲法が守る民主的統治の枠組みに挑戦するものと見做され、多くの米国人や同盟国から「民主主義の伝統を踏みにじっている」と批判されているのです。
4. 国際秩序との摩擦: トランプ氏に対する国際的批判も非常に強いものがあります。その焦点は、戦後築かれた国際秩序や同盟関係を損なう言動です。
彼は「アメリカ第一」を掲げ、NATOや日米安保など伝統的同盟へのコミットメントに疑念を投げかけました。
特にNATOについては加盟国に防衛費拠出増を迫り、「負担を果たさないなら米国も守らない」と発言するなど、集団防衛の根幹を揺るがしました。
2018年のNATO首脳会議では米国の同盟離脱も示唆し欧州首脳を慌てさせました。
欧州のある指導者は「米国が同盟を見捨て、権威主義を支持し民主的伝統を壊そうとしている」とSNSで非難しており、トランプ氏の言動は欧州との信頼関係に深刻なヒビを入れました。
また、EUに対しても「EUは貿易で米国を搾取する敵だ」と述べ、ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領とも公の場で対立しました。
カナダやメキシコなど近隣国の指導者とも緊張が生まれ、2018年のG7サミットでは議長国カナダのトルドー首相を「弱腰で不誠実」と罵倒し共同声明への署名を撤回する異例の事態となりました。
国際協調を無視する態度は気候変動やイラン核合意、UNESCO脱退など多岐にわたり、各国から「米国がもはや世界のリーダーたり得ていない」と批判されました。
特にパリ協定離脱については、同盟国首脳が直接トランプ氏に復帰を説得するほどでしたが、彼は気候変動を「でっち上げられたホークス(ペテン)」とまで呼んで耳を貸さず、NATO内でも気候安全保障への取り組みを妨げたと報じられています。
さらに、トランプ氏がロシアのプーチン大統領に宥和的すぎるとの批判もあります。
2018年の米露首脳会談では、自国情報機関が断定したロシアの選挙介入についてプーチン氏の否定を受け入れるような発言をし、共和党内からも「大統領はプーチンではなく米国を信じるべきだ」と非難されました。
国連など多国間の枠組みに対しても蔑ろな態度で、国連演説では各国首脳が失笑する場面もあったほどです(自国自慢を延々と語ったため)。
こうした振る舞いにより、トランプ政権期の米国の国際的信用度は低下し、ピュー研究所の調査では主要同盟国での米大統領に対する信頼度が歴代最低水準となりました。
「世界の警察」を辞めた米国に不安を覚えた同盟国は、防衛独自化や中国・ロシアへの接近を模索する動きを見せ、国際秩序は動揺しました。
例えばドイツのメルケル氏は「欧州は自力で運命を切り開かなければならない」と発言し、トランプ時代の米国頼みからの脱却を示唆しました。
要するに、トランプ氏は国際協調よりも目先の取引で勝つことを優先するあまり、同盟の絆や多国間主義を軽視し、既存の国際秩序に摩擦と不確実性をもたらしたのです。
その結果、伝統的な盟友からは「アメリカ離れ」の声が上がり、国際社会のリーダーシップを放棄したとの批判が集中しました。
以上のように、トランプ氏が多くの批判を受けるのは、彼の言動や統治スタイルがアメリカ国内の民主主義的価値観や社会の和、さらには国際的な協調体制としばしば深刻に衝突したためです。
支持者にとっては型破りで既存秩序を打ち壊す改革者であっても、反対者にとっては「民主主義の伝統を踏みにじり、権威主義的な衝動を示す危険な人物」と映っています。
トランプ氏自身、「自分は嫌われても構わない。結果を出すことが大事だ」と語っていますが、その型破りさゆえに賛否が極端に分かれる指導者となっているのが現状です。
そして彼が再び大統領の座に就くことになれば、上述した諸懸念が現実化する可能性があるため、国内外で警戒と注目が一層高まっています。

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