ETHは復活するのか?現物ETFの資金流入と「ペクトラ」アップグレードが示す未来

今月のはじめ、一部の取引所でイーサリアム(ETH)が一時2000ドル(約30万円、1ドル=150円換算)まで急落しました。

この急落を見て「ETHの未来は厳しいのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、アメリカで取引されているイーサリアム現物ETF(上場投資信託)のデータを分析すると、意外な事実が浮かび上がります。

トレーダーの資金がビットコイン(BTC)からETHに大きくシフトしているのです。

ETH現物ETFに資金流入、ビットコインは流出が続く

投資調査会社 Farside Investors(ファーサイド・インベスターズ) のデータによると、今月のアメリカのETH現物ETF9銘柄への純流入額は3億9300万ドル(約589億5000万円) に達しました。

これは、暗号資産データ分析企業 Glassnode(グラスノード) が報告した1月の流入額の7倍 に相当します。

特に注目すべきは、ETHのETFはわずか2営業日しか資金流出を記録していない という点です。投資家の関心が強く、売られにくい傾向が見て取れます。

一方、ビットコイン現物ETF の状況は対照的です。

今月、11銘柄のビットコインETFは合計3億7600万ドル(約564億円)の資金流出 を記録しました。

流入があったのはわずか4営業日で、ビットコインへの投資家のセンチメント(市場の心理)はかなり弱まっていることが分かります。

ETHの資金流入を支えるトレード戦略とは?

ETH現物ETFへの資金流入を後押ししている要因の一つに、「キャリートレード」があります。

これは、現物のETHを購入しながら、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の先物市場でETHをショート(売り)するという戦略です。

キャリートレードは通常、市場の流動性を高める効果があります。

しかし、この流入がETH価格の上昇に直接つながっているわけではありません。

実際、ETHは2月3日の急落以来、2600ドル〜2800ドル(約39万〜42万円) の範囲で推移しており、目立った上昇は見られていません。

ETHの価格は上昇する?「ペクトラ」アップグレードに期待

それでも、一部の市場関係者はETHの価格が上昇する可能性があると見ています。

その背景にあるのが、イーサリアムの次回の大型アップグレード「ペクトラ(Pectra)」 です。

このアップグレードでは、イーサリアムの「実行レイヤー(トランザクション処理)」と「コンセンサスレイヤー(ブロックチェーンの安全性を保つ仕組み)」の両方が最適化される 予定です。

これにより、ソラナ(Solana)などのライバルブロックチェーンと競争優位になる と考えられています。

分散型オプションプラットフォーム Derive.xyz の創設者である ニック・フォースター(Nick Forster)氏 は、「ペクトラアップグレードによって、ETHのネットワーク改善、取引速度の向上、ステーキングの強化が進む」と述べています

Derive.xyz(デリブ.xyz)とは?

Derive.xyz(デリブ.xyz) は、イーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)を使って、オプション取引ができる分散型プラットフォームです。

オプション取引は、簡単にいうと「未来の価格を予想して売買する取引」 のことです。

たとえば、あなたが「1ヶ月後にETHの価格が上がると思う!」と予想したとします。
すると、今の価格で買う権利を持つオプション(コールオプション)を買うことができます。

もし本当に価格が上がったら、その権利を使って安く買って高く売る ことで利益を得られます。

逆に、価格が下がったら、オプションを行使せずに損を最小限に抑えることができます。

さらに、イーサリアムの創設者 ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏 は、L1(レイヤー1)のガスリミットを10倍に引き上げる計画 を進めており、これがアプリ開発の活性化やセキュリティ強化につながると期待されています。

L1(レイヤー1)のガスリミットを10倍に引き上げる計画とは?

イーサリアムの開発者である ヴィタリック・ブテリン氏 は、レイヤー1(L1)のガスリミットを10倍に引き上げる計画 を考えています。

では、「L1(レイヤー1)」や「ガスリミット」とは何なのかわかいやすく説明します。

L1(レイヤー1)とは?

ブロックチェーンには、いくつかの層(レイヤー)があり、「レイヤー1(L1)」は最も基本となるブロックチェーンのこと です。

例:道路にたとえてみよう
レイヤー1(L1) → 幹線道路(大きな道路)
レイヤー2(L2) → バイパスや高速道路(追加の道)

イーサリアムのL1は、全ての取引の処理を行う「本線」のようなもの です。

ただし、L1の処理能力には限界があり、渋滞(取引遅延)が起こることがある のが問題でした。

ガスリミットとは?

イーサリアムでは、取引をするたびに「ガス代(手数料)」がかかる 仕組みになっています。
「ガスリミット」とは、1つのブロック(取引を記録する単位)に含められる取引の上限 のことです。

例:バスにたとえてみよう
・バス1台(1つのブロック)には、乗れる人数(ガスリミット) が決まっている
・人数が多すぎると、バスを待つ人が増えて渋滞(取引遅延)が発生
・バスのサイズ(ガスリミット)を大きくすれば、一度に乗れる人が増えてスムーズに移動できる

つまり、ガスリミットを増やすことで、1回の処理でより多くの取引を処理できるようになる というわけです。

L1のガスリミットを10倍にすると何が変わる?

ヴィタリック氏の計画では、L1のガスリミットを現在の10倍に増やす ことで、以下のような改善が期待されています。

✅ 取引速度が大幅に向上(処理できる取引が増えるため、待ち時間が短縮)
✅ ガス代(手数料)が下がる可能性(混雑が減ることで、手数料が安くなるかもしれない)
✅ L2(レイヤー2)の負担が減る(本線のL1が強化されることで、L2に頼らなくても良くなる)

これによって、イーサリアムはより多くの人が快適に使えるブロックチェーン へと進化することが期待されています。

機関投資家の関心が高まるイーサリアム


イーサリアム財団も、さらなる成長を後押ししています。

最近、DeFi(分散型金融)プロジェクトに1億2000万ドル(約180億円) の資金を割り当てました。

これは、ETHrealize(イーサリアムの金融統合プロジェクト)を通じて、機関投資家の関心を高める狙い があります。

ETHrealizeは、伝統的な金融機関とブロックチェーンをつなぐプロジェクトで、ヴィヴェク・ラマン(Vivek Raman)氏が率いています。

このような動きは、イーサリアムの将来性に対する信頼を高める要因 となるでしょう。

ETHrealize(イーサリアムの金融統合プロジェクト)とは?

ETHrealize(イーサリアルライズ) は、金融機関(銀行や投資会社)とイーサリアムのブロックチェーンをつなげるためのプロジェクト です。

簡単に言うと、今までの金融の仕組みをブロックチェーンの世界に取り入れて、もっと便利にすることを目指している 取り組みです。

ETHrealizeの目的

ETHrealizeの目標は、以下のようなことを実現することです。

✅ 銀行や投資会社が、もっと簡単にETHを扱えるようにする
✅ 大手金融機関が安心してブロックチェーンを活用できる環境を作る
✅ DeFi(分散型金融)と伝統的な金融をつなぐ

これによって、これまで暗号資産を使わなかった投資家や企業も、ETHを使った金融サービスに参加しやすくなる のです。

なぜ投資家の関心が高まるのか?

ETHrealizeのようなプロジェクトが進むことで、機関投資家(銀行や投資ファンドなどの大きなお金を動かす投資家) がETHに注目する理由が増えます。

① 銀行や投資ファンドがETHを利用しやすくなる
→ これまで銀行や証券会社は、規制の問題や技術の違いから、ブロックチェーンを簡単に使うことができませんでした。
ETHrealizeがこの壁を取り除くことで、大きな資金がETH市場に流れ込む可能性があります。

② 伝統的な金融とDeFi(分散型金融)の融合が進む
→ DeFi(分散型金融)は、銀行を通さずに暗号資産の取引や貸し借りができる仕組み ですが、これまでは個人投資家が中心でした。
ETHrealizeがあれば、大手金融機関もDeFiの仕組みを利用しやすくなる ため、新しい投資チャンスが生まれます。

③ ETHの信頼性が上がる
→ 大手金融機関がETHを利用し始めると、「ETHは安全で将来性のある資産だ」と多くの人が考えるようになります。
すると、ETHの価値が安定し、さらに投資家の注目が集まる という好循環が生まれるのです。

ETHrealizeが成功すれば、ETHの市場がさらに拡大し、より多くの投資家がETHに注目するきっかけになる 可能性は高いです。

ETHrealizeが成功した場合のETHの価格や市場への影響

ETHrealizeが成功すると、ETHの市場規模が大きくなり、価格の上昇や安定化が期待される 可能性があります。

具体的にどのような影響があるのか、ポイントごとに説明します。

機関投資家の資金が流入し、ETHの価格が上昇する可能性

ETHrealizeの目的は、伝統的な金融機関(銀行・投資ファンドなど)がETHを活用しやすくすること です。

これまで機関投資家の多くは、
「暗号資産は不安定すぎるし、規制が厳しくて扱いづらい」
と考え、ETHなどの暗号資産には慎重な姿勢をとっていました。

しかし、ETHrealizeがETHと既存の金融システムをつなぐことで、機関投資家が安心してETHを購入・運用できる環境が整うと、
✅ 機関投資家による大量の買い注文が入る
✅ ETHの需要が急増し、価格が上昇する
といった動きが期待できます。

ビットコイン(BTC)の現物ETF(上場投資信託)が承認されたことで、機関投資家の資金流入によりBTC価格が安定・上昇した という例があります。

ETHrealizeが成功すれば、ETHにも同じような現象が起こる可能性があります。

ETHの流動性が向上し、市場がより安定する

「流動性」とは、市場でスムーズに売買できるかどうか を示す言葉です。ETHrealizeが成功すると、
✅ ETHを持つ人や取引する人が増える
✅ 機関投資家の参入により、価格の変動が少なくなり安定する
といった効果が期待できます。

これまで暗号資産市場は、「短期間で大きく価格が動く」という特徴がありました。

しかし、ETHrealizeによって機関投資家が大量のETHを保有し、安定した資産運用を行うようになれば、ETHの価格も安定しやすくなるでしょう。

DeFi(分散型金融)がさらに成長し、ETHの実需が拡大

ETHrealizeが成功すれば、従来の銀行・金融機関とDeFi(分散型金融)の間の壁がなくなり、より多くの人がETHを使うようになる 可能性があります。

例えば、
✅ 銀行がETHを担保にした融資(ローン)を提供する
✅ ETHを活用した新しい金融商品が増える
✅ ETH決済が普及し、実際の支払い手段としても使われる
といった形で、ETHの需要がますます拡大するかもしれません。

ETHの活用が増えれば、長期的に価格が上昇し、ETHの価値が高まる ことにつながるでしょう。

ETHの規制リスクが低減し、信頼性が向上

ETHrealizeが金融機関とETHを結びつけることで、政府や規制当局の理解も進むと考えられます。

これまで暗号資産は「規制が曖昧でリスクが高い」とされていましたが、
✅ ETHが既存の金融市場の一部として扱われるようになる
✅ 規制が明確になり、機関投資家も安心してETHを運用できる
✅ 政府や金融当局の信頼を得ることで、さらに市場が拡大する

こうした動きが進めば、ETHが「デジタルゴールド」や「インターネット上の新しい金融システムの基盤」として、より広く受け入れられる可能性が高まります。

ETHの未来は明るいのか?

ETHは最近、一時的に急落しましたが、機関投資家の資金流入や技術的な進化によって、新たな成長の兆しが見えています。

特に、ETH現物ETFの流入増加 や 「ペクトラ」アップグレード によるネットワークの改善は、ETHの需要をさらに押し上げる要因となるでしょう。

また、ETHrealizeを通じた伝統的な金融との統合が進めば、ETHはより信頼される資産となり、市場の安定化や価格上昇が期待できます。

さらに、L1ガスリミットの引き上げ によってETHの取引がよりスムーズになり、ソラナ(Solana)などのライバルと競争できる環境が整う 可能性もあります。

こうした要素が重なることで、ETHは単なる暗号資産を超え、次世代の金融インフラの中心 になっていくかもしれません。

ETHの今後の価格変動や市場の動きには引き続き注意が必要ですが、長期的な成長を期待する投資家にとって、今は重要な転換点となるタイミング かもしれません。

今後の動向を見守りながら、新しい時代の変化に対応していきましょう

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