最近発表されたビットコイン政策研究所の論文によると、中央銀行がビットコイン(BTC)を「準備資産」にするべきだという主張が出ています。
準備資産とは、国や銀行が経済的な危機に備えて貯めておく価値のある資産のことです。
この論文では、ビットコインが以下のようなリスクに対して、経済を守るための「ヘッジ手段」として役立つとされています。
ヘッジ手段というのは、予測できない問題に備えるために、リスクを避ける方法のことです。
たとえば、インフレ(お金の価値が下がること)、国と国の間での緊張や紛争(地政学的リスク)、資本規制(国が外貨の使い方を制限すること)、国が借金を返せなくなる(債務不履行)、銀行が破綻してしまうリスク、さらにはアメリカが他の国に対して行う制裁措置に対する対策として、ビットコインが重要な役割を果たすと考えられています。
ビットコインの仕組みやその強みを知ることで、暗号資産に対する理解を深め、未来の経済に対する備えについても考えるヒントになるでしょう。
ビットコインがポートフォリオの多様化に役立つ理由
経済学者のマシュー・フェランティ氏は、ビットコインが他の金融商品(たとえば株や債券)と価格の動きがあまり連動しないことから、ポートフォリオ(投資の組み合わせ)を「多様化」するのに効果的だと説明しています。
ポートフォリオの多様化とは、異なる種類の資産を持つことでリスクを減らし、損失を抑える方法です。
ビットコインは、価格がほかの金融商品とあまり連動しないため、投資全体のリスクを軽減するのに役立つとされています。
ポートフォリオの具体例
ポートフォリオを簡単に説明すると、「いろいろな種類のものを持って、リスクを減らす」ことです。
たとえば、あなたが持っているお金をどうやって使うか考えるとします。
もしも全てのお金を1つのもの、たとえばお菓子に使ってしまうとどうなるでしょう?
お菓子の値段が急に上がってしまったり、飽きてしまったりしたら、困りますよね。
そこで、いろいろなものにお金を分けて使うことを考えます。たとえば、半分はお菓子に使って、もう半分は本やゲームに使うというふうに。これが「多様化(たようか)」という考え方です。
投資の世界でもこれと同じで、お金を株(会社に投資すること)や債券(国や会社にお金を貸して利子をもらうこと)、金(きん)など、いろいろな種類の資産に分けて投資します。
これによって、もしある1つの資産がうまくいかなくなっても、他の資産がカバーしてくれるかもしれないので、リスクを減らすことができるんです。
この「いろいろなものを持つことでリスクを減らす」という考え方を「ポートフォリオ」と呼んでいます。
カウンターパーティーリスクとは?
フェランティ氏は、ビットコインには「カウンターパーティーリスク」がないことも強調しています。
カウンターパーティーリスクとは、取引の相手(たとえば銀行や会社)が約束を守れなくなるリスクのことです。
ビットコインは、誰か特定の相手に依存しないので、このリスクがないのです。
つまり、ビットコインは国が借金を返せなくなったり、金融制裁を受けたりしたときに、価値を守る「ヘッジ手段」として効果的です。
特に、ベネズエラやロシアのように、制裁を受けている国にとっては重要な資産とされています。
カウンターパーティーリスクの具体例
あなたが友達にお金を貸したとします。
その友達が「来週、必ずお金を返すよ」と約束しました。
しかし、もしその友達が来週お金を持っていなかったら、どうなるでしょう?
お金が返ってこなくなるかもしれませんよね。
これが「カウンターパーティーリスク」です。
つまり、相手が約束を守れなくなるリスクです。
同じように、大人の世界でも、銀行や会社にお金を預けたり、投資をしたりすると、その銀行や会社が約束どおりにお金を返せなくなることがあります。
たとえば、銀行が倒産(お金がなくなってしまうこと)したら、お金を預けていた人は、そのお金を失う可能性があります。
でも、ビットコインには特定の相手がいないので、誰かが約束を破る心配がありません。
これが、フェランティ氏が言っている「ビットコインにはカウンターパーティーリスクがない」ということなんです。
ビットコインはすべての答えではないが、有効なヘッジ手段
フェランティ氏は、ビットコインや金がすべての中央銀行にとっての解決策ではないとしつつも、これらは価値を保存する手段として有効だと指摘しています。
それは、これらの資産が「価値を守る」ことに優れているからです。
中央銀行は、国のお金や経済を管理している大切な機関です。
経済が不安定なときでも、国の価値をしっかり守ることが求められます。
そこで、金やビットコインが注目されています。
金が選ばれる理由
金は昔からずっと価値があるとされてきました。
お金の価値が下がったり、経済が不安定になっても、金はその価値を守りやすい資産です。
たとえば、戦争や大きな経済危機が起きたとき、人々は金を買うことで、自分の資産を守ろうとします。
金は何百年も使われてきた「価値保存の手段」なので、中央銀行はそれを備えておくことで、危機に備えることができるのです。
ビットコインが注目される理由
ビットコインはデジタルなお金のようなものですが、金と同じように価値を守る役割を果たす可能性があります。
たとえば、国のお金(通貨)の価値が急に下がったりしたとき、ビットコインを持っていれば、その損失を防げることがあります。
また、ビットコインは誰かに管理されていないので、国際的な問題(たとえば、金融制裁)に対しても強いとされています。
すべての中央銀行にとっての解決策ではない理由
ただし、フェランティ氏は「ビットコインや金がすべての中央銀行にとっての解決策ではない」と言っています。
これがどういう意味かというと、どの国にも完璧に合うわけではないということです。
国の経済や状況によって、必要な資産や対策は違います。
たとえば、ある国では金がとても役立つかもしれないけれど、別の国ではビットコインの方が重要になることもあるからです。
まとめると、ビットコインや金は中央銀行にとって、経済を守るための大切な資産になりうるけれど、それだけで全ての問題が解決できるわけではない、ということです。
ビットコインを準備資産にする議論が進行中
ビットコイン政策研究所のこの論文は、ビットコインをアメリカの財務省の「戦略的準備資産」として導入するべきだという声に応えたものです。
「戦略的準備資産」というのは、国が将来の経済的な問題や危機に備えて、大切に保管しておく資産のことです。
これには、価値があまり変わらず、長期間にわたって使えるものが選ばれます。
具体的には、金(きん)や外国のお金(外貨)、ビットコインのようなデジタル資産などが戦略的準備資産として考えられています。
実際、アメリカの政治家の中にもビットコインをこのような資産にしようと提案している人がいます。
たとえば、2024年にテネシー州ナッシュビルで開催された「ビットコイン2024カンファレンス」では、トランプ前大統領が講演を行いました。
その後、シンシア・ルミス上院議員は、ビットコインを戦略的準備資産とする法案を提出しました。
この法案では、アメリカがビットコインの総供給量の5%を取得することを目指しています。
シンシア・ルミス上院議員
シンシア・ルミス上院議員は、アメリカの政治家で、特にビットコインや暗号資産に関心を持っていることで有名です。
彼女はアメリカのワイオミング州という州を代表する上院議員です。
上院議員というのは、アメリカの国会で、法律を作ったり国の大きな決定をしたりする重要な役割を持つ人たちのことです。
暗号資産への取り組み
ルミス議員は、ビットコインや他の暗号資産(デジタル通貨の一種)がアメリカの経済にとって非常に重要だと考えていて、それらを法律で守るために積極的に活動しています。
ビットコインのようなデジタル通貨は、国のお金とは違って、インターネット上でしか使えないけれど、世界中の人が使えるお金です。
ルミス議員は、この新しい形のお金が、未来の経済に大きな役割を果たすと信じています。
トランプ氏のビットコインでの債務返済の示唆
アメリカの前大統領ドナルド・トランプ氏は、フォックスニュースのインタビューで、アメリカの政府がビットコインを使って国の借金(政府債務)を返す可能性について示唆しました。
政府債務とは、国が他の国や銀行から借りたお金のことです。
ビットコインは、デジタル通貨の一種で、通常の紙幣とは違い、インターネット上で取引されるお金です。
トランプ氏も、この新しい形のお金が、アメリカの経済問題を解決する手段になり得るかもしれないと言っています。
「ビットコインは21世紀のルイジアナ買収」との主張
マイクロストラテジーという会社のCEOであるマイケル・セイラー氏は、アメリカ政府がビットコインを戦略的に購入することは、21世紀における「ルイジアナ買収」に匹敵する大きな出来事だと述べています。ルイジアナ買収とは、1803年にアメリカがフランスから大きな領土を1500万ドルで購入して、国土を倍に広げた出来事です。
セイラー氏は、ビットコインを大量に購入することで、アメリカは将来的に大きな利益を得られると考えているのです。
彼は、この購入がアメリカにとって非常に重要な一手になると主張しています。
マイクロストラテジー
アメリカにある大きな会社で、データ分析やソフトウェアを使って企業が必要な情報を集めたり、それをもとに賢い決断をしたりする手助けをしています。
ビジネスの世界では、たくさんの情報を使って計画を立てたり、戦略を決めたりすることがとても大切なので、マイクロストラテジーの技術が役立っています。
しかし、最近この会社が注目されている理由は、ビットコインへの大規模な投資です。
マイクロストラテジーは、自分たちの持っている資金をビットコインという暗号資産に大量に投資しているんです。
普通、会社は資産として現金(ドルなど)や株(会社の所有権)を持つことが多いですが、マイクロストラテジーはその代わりにビットコインを大量に買い集めています。
戦略的準備資産としてのビットコインと意見の違い
ビットコインを「戦略的準備資産」として使おうというアイデアは、ビットコインの保有者の間で人気があります。
戦略的準備資産とは、国が経済的な危機に備えて大切に保管する資産のことです。
しかし、この意見には賛否両論があります。
カルダノという暗号資産を作ったチャールズ・ホスキンソン氏は、ビットコインを戦略的準備資産として採用すると、その価値が上がるかもしれないが、同時に国がビットコインのネットワークに影響を与える可能性があると懸念しています。
ビットコインのネットワークというのは、ビットコインを取引する仕組みで、基本的に誰か一人や国が管理していないところが特徴です。
ホスキンソン氏は、国がこれに介入するとビットコインの自由な運用が損なわれる可能性があると心配しているのです。
まとめ
マイクロストラテジーは、もともとは企業向けのデータ分析やソフトウェアを提供するアメリカの会社ですが、最近ではビットコインへの大規模な投資で注目されています。
CEOであるマイケル・セイラー氏は、ビットコインを将来の重要な資産と考え、会社の資産をビットコインに大きく投資するという戦略を取っています。
彼は、ビットコインが「デジタルゴールド」のような存在で、インターネット上で世界中の人々が簡単に取引できる新しい形のお金として価値が上がると信じています。
また、ビットコインは誰か一人の管理下にないため、国や会社の影響を受けにくいという点でも魅力的だとされています。
ビットコインを政府の「戦略的準備資産」に加えるべきだという意見も出てきています。
アメリカの前大統領ドナルド・トランプ氏が、政府債務の返済にビットコインを使うことを示唆したり、シンシア・ルミス上院議員がビットコインを国の準備資産とする法案を提案するなど、ビットコインの役割が大きく議論されています。
しかし、全ての人がこの考えに賛成しているわけではありません。
例えば、カルダノの創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏は、国がビットコインを大量に保有することが、ビットコインのネットワークに悪影響を与える可能性があると懸念しています。
今後の展開について考えると、ビットコインがさらに多くの国や企業で重要な資産として採用される可能性があります。
ビットコインは、インターネット上で自由に取引でき、価格の変動も大きいという特性を持っているため、リスクを伴う反面、未来の経済を変える力を持っているかもしれません。
ビットコインが実際に国の経済戦略に組み込まれるかどうかは、これからの政治的・経済的な動きに大きく左右されるでしょう。
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