中東・北アフリカ地域が仮想通貨市場で注目される理由とは?最新報告から読み解く

参照元:コインテレグラフジャパン

2023年7月から2024年6月にかけて、中東・北アフリカ地域(MENA)は世界全体の仮想通貨取引量の7.5%を占めたことが明らかになりました。

仮想通貨に関するデータ分析会社チェイナリシスの報告によると、この期間にMENA地域で受け取られた仮想通貨の総価値はなんと3387億ドル(約50兆円)にも上ると推定されています。

特に注目すべきは、これらの取引の多くが機関投資家プロの投資家によるものだったという点です。

機関投資家とは、銀行やファンドなどの大規模な組織を指し、彼らは膨大な資金を運用しています。

これに対し、プロの投資家は個人であっても、金融市場や投資に関して高度な知識や経験を持つ人々のことです。

このような投資家層の存在は、その地域が仮想通貨市場において非常に重要な位置を占めていることを示しています。

暗号資産や仮想通貨といった言葉は耳にすることが増えていますが、初心者にとってはこのような市場規模のニュースは少し難しいかもしれません。

この記事では、中東・北アフリカ地域(MENA)の仮想通貨市場の動向をわかりやすく解説し、今後の展望についても触れていきます。

仮想通貨の初心者でも、安心して読める内容になっているので、ぜひご覧ください。

チェイナリシス(Chainalysis)

ブロックチェーン技術と仮想通貨に関するデータを分析するグローバルな企業です。

主に政府機関や金融機関、取引所などに対して、仮想通貨のトランザクションに関する情報を提供しています。

チェイナリシスは、ブロックチェーン上で行われる取引を追跡・分析し、違法な活動や詐欺、マネーロンダリングを検出することに長けています。

チェイナリシスの技術は、世界中の企業や政府機関にとって仮想通貨に関するリスク管理や規制遵守を行うための重要なツールとなっています。

彼らの分析データは、金融犯罪の予防や捜査、仮想通貨の安全な利用促進に貢献しています。

これにより、仮想通貨に関わるプレイヤーは、透明性を高め、信頼性のある市場環境を作ることが可能となり、仮想通貨のさらなる普及に役立っています。

取引の規模と小口投資家の割合

チェイナリシスの報告書によると、MENA地域における仮想通貨取引の93%が1万ドル(約150万円)以上という大規模なもので、これは主に機関投資家プロの投資家によるものです。

これに対し、小口の個人投資家、つまり少額の資金で投資を行う一般の個人投資家が占める割合はわずか1.8%しかありません。

個人投資家とは、銀行やファンドなどの大きな機関ではなく、自分の資金で投資活動を行う人たちのことです。

このことから、MENA地域では大規模な投資が仮想通貨取引の中心を占めていることがわかります。

中央集権型取引所の支配的な役割

MENA地域における仮想通貨取引は、主に中央集権型取引所を通じて行われています。

中央集権型取引所とは、ユーザーが仮想通貨の売買を行う際に、運営者や管理者が取引を仲介するプラットフォームのことです。

運営者がユーザーの資産や取引を管理するため、一般的にはユーザーフレンドリーなインターフェースやサポートが特徴です。

このような取引所がMENA地域で多数利用されていることが、取引量の多さに貢献していると言えます。

分散型プラットフォームへの関心

一方で、アラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアは、分散型取引所への「高い関心」を示していることが報告書で強調されています。

分散型取引所(Decentralized Exchange, DEX)とは、運営者を介さずに、ユーザー同士が直接仮想通貨を取引するプラットフォームのことです。

このような分散型の仕組みは、取引が透明でセキュリティも高いとされており、ユーザー自身が資産を完全にコントロールできる点が魅力です。

今後、MENA地域で分散型プラットフォームの利用が増える可能性があり、この動向には注目が集まっています。

分散型プラットフォームの例:Uniswap(ユニスワップ)

Ethereum(イーサリアム)というブロックチェーン上で動作する代表的な分散型取引所です。

Uniswapでは、ユーザーが取引所を介さずに、他のユーザーと直接仮想通貨を交換できる仕組みが採用されています。

初心者にわかりやすく説明するために、身近な例を使って説明します。

自動マーケットメイカー(AMM)の仕組み

通常の取引所では、売りたい人と買いたい人が一緒に取引するために「オーダーブック」という仕組みが使われます。

これは、売り手と買い手の希望が一致するまで待つ必要があるシステムです。

例えば、フリーマーケットやバザーで、あなたが欲しい商品を売っている人を探して、その人と交渉して取引を成立させるようなものです。

一方、Uniswapのような自動マーケットメイカー(AMM)では、売り手や買い手を探す必要がありません。

代わりに、流動性プールという「仮想通貨の貯金箱」が用意されており、そこに仮想通貨を預けておくことで、誰でもその貯金箱から仮想通貨を買ったり、売ったりすることができます。

つまり、いつでも自分が欲しい仮想通貨を買ったり、持っている仮想通貨を売ったりできるのです。

これを、日常の例で説明すると、次のようなイメージです。

  • オーダーブック方式(伝統的な取引所): あなたがパン屋でパンを買うとき、店員さんに「パンを1つください」とお願いし、店員さんがパンを持ってきて、支払いをします。店員さんがいなければ、パンを買うことができません。
  • 流動性プール(Uniswapの仕組み): あなたが無人のパン屋に行くと、棚にパンが並んでいて、欲しい分だけお金を払って自分で取っていける仕組みです。誰かと直接やり取りする必要はなく、常にパン(仮想通貨)が棚(流動性プール)にある状態です。

流動性提供者と取引手数料

Uniswapでは、流動性プールに仮想通貨を預ける人を流動性提供者と呼びます。

例えば、友達がパン屋にパンを預けていると想像してください。

その友達は、あなたがそのパンを買うたびに少しずつお金(取引手数料)を受け取ります。

このようにして、仮想通貨を流動性プールに預けると、他の人がその仮想通貨を取引するたびに手数料を受け取ることができる仕組みです。

Uniswapの大きな特徴は、売り手や買い手を探さなくても、流動性プールを使って常に取引が成立する点です。

流動性提供者も、預けた仮想通貨が取引されることで手数料を得られるため、両者にとってメリットのあるシステムです。

このように、Uniswapは買いたい人と売りたい人のマッチングを自動化し、流動性提供者も利益を得ることができる仕組みを持っています。

仮想通貨取引をもっと手軽にしたい人にとって、非常に便利なプラットフォームです。

アラブ首長国連邦が仮想通貨のハブに台頭

アラブ首長国連邦(UAE)は、近年仮想通貨に対して非常に前向きな姿勢を示し、規制の明確化と技術の推進を行っています。

これにより、UAEは世界的な仮想通貨ハブとして急速に成長しています。

仮想通貨ハブとは、仮想通貨の取引や技術開発が活発に行われ、世界的に影響力を持つ中心地のことです。

UAEの政府は、仮想通貨に対する法律や規制を整備し、技術革新を進めるための環境を整えています。

ドバイ初等裁判所による仮想通貨支払いの合法化

2024年8月、ドバイ初等裁判所は画期的な判決を下し、仮想通貨を雇用契約の正式な支払い手段として認めました。

これにより、従業員がデジタルトークンで給与を受け取ることが、法的に認められることとなりました。

デジタルトークンとは、仮想通貨の一種で、ブロックチェーン技術を利用して発行されるデジタル資産のことです。

これまで、給与の支払いは現金や銀行振込などの法定通貨で行うのが一般的でしたが、UAEは仮想通貨を使った新しい給与システムを導入し始めています。

具体的な裁判の事例

この判決は、原告が法定通貨と一緒にエコワットトークンというデジタルトークンで月給を受け取ることに同意していたが、雇用主がトークンを支払わなかったことが発端です。

エコワットトークンとは、特定のプロジェクトやサービスに関連する仮想通貨で、エネルギー分野に関連する取り組みが背景にあります。

原告は給与の一部がこのトークンで支払われることを期待していましたが、雇用主から支払いが行われなかったため、裁判所に救済を求めました。

仮想通貨支払いの新たな展開

この件に関して、2023年の裁判では原告が金銭的損害を受けたと認められたものの、仮想通貨での支払いを強制することはありませんでした。

しかし、2024年8月の裁判ではこの立場が覆り、仮想通貨による支払いも正式に認められることになりました。

この判決は、UAEが仮想通貨を金融システムに組み込む動きの象徴的な出来事であり、今後ますます多くの企業が仮想通貨を給与や報酬の支払い手段として採用する可能性が高まっています。

仮想資産プロバイダーの国内全域でのサービス提供が可能に

2024年9月、アラブ首長国連邦(UAE)は仮想通貨の受け入れをさらに強化するため、新たな規制の動きを見せました。

これにより、ドバイでライセンスを取得した仮想資産プロバイダーが、UAE国内全域でサービスを提供できるようになります。

仮想資産プロバイダーとは、仮想通貨の取引や管理を行う企業のことです。

これまでは、ドバイのような特定の地域でしかサービスを提供できなかった企業が、国全体で展開できるようになり、仮想通貨の利用が広がることが期待されています。

VARAとSCAによる規制プロセスの合理化

ドバイの仮想資産規制当局(VARA)は、仮想通貨に関する規制を管理する機関で、今回、UAE証券商品庁(SCA)と新たなパートナーシップを結びました。

このパートナーシップにより、規制プロセスが合理化され、投資家が仮想通貨に投資する際のリスクや詐欺からの保護が強化される予定です。

SCAは、UAE内で証券や金融商品の監督を行う機関で、VARAとの協力によって仮想通貨の安全性がさらに高まることが期待されています。

これにより、仮想通貨を利用する投資家に対する包括的な保護が提供され、安心して取引ができる環境が整備されていきます。

中央銀行によるカストディアル保険商品の承認

さらに、アラブ首長国連邦の中央銀行は、仮想通貨に関わる金融機関とその顧客を保護するためのカストディアル保険商品を承認しました。

カストディアル保険とは、ハッキングや内部詐欺、さらには仮想通貨を保管するインフラが破損した際に発生する損害を補償する保険のことです。

この保険は、仮想通貨の取引所や管理会社がハッキングなどによって顧客の資産を失うリスクに備えるための重要な措置です。

これにより、仮想通貨の保管や取引におけるリスクが軽減され、金融機関や投資家が仮想通貨をより安全に扱える環境が整いつつあります。

この動きは、仮想通貨の利用者にとって安心材料となり、仮想通貨市場のさらなる成長を促進する一助となるでしょう。

MENA地域の仮想通貨市場の今後の展望

中東・北アフリカ地域(MENA)は、仮想通貨市場で重要な成長エリアとして注目されています。

2023年から2024年にかけての仮想通貨取引量が世界全体の7.5%を占めるなど、その影響力は増大しています。

今後も、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアといった国々が、規制の整備や技術革新を進めていくことで、MENA地域はさらに仮想通貨の中心的なハブとして成長していくと期待されています。

特に、分散型取引所(DEX)や新しいデジタル資産管理の手法が注目を集めており、投資家や企業はこの地域での仮想通貨市場の発展に期待を寄せています。

また、政府と金融機関が連携して仮想通貨に対する規制を強化し、投資家保護や詐欺対策を進めることで、MENA地域の仮想通貨市場はより安全かつ信頼できる環境になるでしょう。

これにより、機関投資家だけでなく、小口投資家や一般ユーザーも仮想通貨取引に参加しやすくなると予測されます。

今後、MENA地域はグローバルな仮想通貨経済において、さらに重要な役割を担うことになるでしょう。

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