ステーブルコインとは、価格が安定している暗号資産(仮想通貨)のことです。
一般的な暗号資産であるビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は価格変動が激しく、1日で大きく値上がりしたり、逆に値下がりすることがあります。
しかし、ステーブルコインは、法定通貨(米ドルや日本円など)に連動しているため、価格が大きく変動しません。
たとえば、1USDC(USDコイン)は常に1米ドルとほぼ同じ価値を保ちます。これにより、送金や決済の際に「価値が変わってしまうリスク」を抑えられるのが特徴です。
ステーブルコインの歴史と成長
ステーブルコインは、2014年ごろから登場し、最も有名な「USDT(テザー)」が2015年に発行されました。
その後、サークル社の「USDC」やパクソスの「BUSD」など、さまざまなステーブルコインが生まれ、現在では世界市場の時価総額が35兆円を突破しています。
特に、アフリカや南米、東南アジアなどの新興国では、銀行口座を持てない人でもスマートフォンとインターネットさえあれば送金できる手段として普及しています。
例えば、中南米やサブサハラ・アフリカでは、2023年から2024年にかけてステーブルコインの取引量が前年比40%以上も成長しました。
これは、銀行を介さずに国境を超えてお金を送れるため、送金手数料を抑えられることが大きな理由です。
日本でのステーブルコインの法整備と規制
日本では、2022年に資金決済法が改正され、2023年6月に施行されました。この法律によって、日本国内で発行されるステーブルコインは「電子決済手段」と位置づけられました。
具体的には、
- 発行できるのは銀行、資金移動業者、信託会社のみ
- 取引の仲介業者(取引所など)には「電子決済手段等取引業」の登録が義務付けられる
というルールが定められています。
これは世界で初めての法整備でしたが、厳格な規制の影響で、ライセンスを取得する企業がなかなか出てこなかったのが課題でした。
2025年、日本でも本格的な普及へ
そんな中、2025年には日本でもステーブルコインの本格的な普及が始まる見通しです。
- SBI VCトレードは、2025年第1四半期(1~3月)にUSDCの取り扱いを開始予定
- JPYC社は、今夏にも日本円建てのステーブルコイン「JPYC」を発行予定
JPYC社は、すでにUSDCを発行するサークル社から世界で初めて出資を受けた企業であり、日本でのステーブルコイン市場の拡大を目指しています。
JPYCとは?
JPYCは
- 日本円に連動したステーブルコイン
- 発行開始時には100億円規模の流通量を見込み、その後1000億円、1兆円へと拡大予定
- SBI VCトレードやコインチェックなどの取引所での取り扱いも視野に入れる
といった計画を発表しています。
JPYC社の戦略と収益モデル
- 発行したJPYCの裏付け資産(国債など)を運用して収益を得る
- USDCと日本円の両替手数料(0.5%)を収益とする
という2つの柱でビジネスを進める予定です。
例えば、JPYCを1兆円分発行し、国債の平均金利が1%の場合、年間100億円の利益が見込めると試算しています。
また、JPYCをUSDCに交換する際の手数料で、もし1兆円分の取引が発生すれば50億円の手数料収入が見込めるとのことです。
ただし、JPYCを発行するには「資金移動業のライセンス」が必要であり、現在はその最終審査の段階にあります。
もし承認されれば、日本でのステーブルコイン市場が一気に拡大する可能性があります。
日本円建てステーブルコインのメリット
日本の企業や投資家にとって、日本円建てのステーブルコインは大きな利便性を持ちます。
- 税金の支払いや会計処理がスムーズ
- 法律上、日本の企業は日本円で会計処理を行う必要があります。JPYCなら、円建てのまま決済ができるため、価格変動の影響を受けずに取引が可能です。
- 低金利のメリットを活かせる
- 日本円の金利は米ドルに比べて低いため、JPYCを活用して資金調達し、海外で投資するといった使い方も考えられます。
今後の課題と展望
ステーブルコインの普及には、マネーロンダリング(資金洗浄)対策が重要なポイントになります。
JPYC社は、日立製作所など13社と連携し、不正取引を検知・防止するための技術開発を進めています。
また、日本国内の規制に適応しながら、安全にステーブルコインを利用できる環境を整えていくことが求められています。
今後、日本でもステーブルコインの本格利用が始まり、デジタル決済や送金の形が大きく変わる可能性があるでしょう。
まとめ
- ステーブルコインとは、法定通貨(米ドルや日本円)に連動し、価格が安定した暗号資産
- 世界市場では時価総額35兆円を超え、新興国では銀行を介さない送金手段として普及
- 日本では2023年6月に法整備が進み、2025年には本格的な普及が予想される
- JPYC社が日本円建てのステーブルコイン「JPYC」を発行予定
- 今後の課題はマネーロンダリング対策と規制対応
ステーブルコインは、これからのデジタル決済や国際送金のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
日本でも2025年以降、その利便性が広く認識されるようになるかもしれません。

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