イーサリアムはビットコインに次ぐ人気の暗号資産ですが、単なるデジタル通貨以上の特性を持っています。
その特徴は、「スマートコントラクト」と「ガス」という2つの主要な要素によって形成されています。
スマートコントラクト
スマートコントラクトはプログラム可能な契約で、特定の条件が満たされたときに自動的に実行されます。
分かりやすく言うと、これは自動販売機のようなものです。
自動販売機に500円を入れてコーラのボタンを押すと、決まった結果としてコーラが出てきます。
これと同様に、スマートコントラクトも条件を満たすと、プログラムされた結果が自動的に生じます。
ガス代
イーサリアムのもう一つの特性は、”ガス代”と呼ばれるシステムです。
ガス代は、イーサリアムネットワーク上での取引やスマートコントラクトの実行に必要な手数料を表しています。
取引で発生したガス代は、取引の承認を行う「マイナー」に支払われます。
ガスの量は、取引の複雑さやネットワークの混雑具合によって変わります。
これを日常生活に例えると、ガス代はタクシーの運賃のようなものです。
タクシーでは、目的地までの距離や交通状況によって料金が変わります。
同様に、ガス代もスマートコントラクトの複雑さやネットワークの混雑具合によって必要な量が変わるのです。
これらが、イーサリアムの基本的な特性です。
イーサリアムは暗号通貨としてだけでなく、これらの革新的な機能により、さまざまな分野での新たな可能性を提示しています。
イーサリアムの歴史
イーサリアムは2013年にロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリンによって提案され、2015年に公開された暗号資産です。
当初からブテリンの目指したのは、ただ単に新たな暗号通貨を生み出すことではなく、その上で動作する”スマートコントラクト”という概念を活用した汎用的なプラットフォームを提供することでした。
それを分かりやすく説明すると、ビットコインはかつての電話のようなもので、主な機能は人から人への通話(つまり送金)だけでした。
それに対し、イーサリアムはスマートフォンのようなもの。
つまり、通話もできるが、その上でアプリ(スマートコントラクト)を動かすことも可能な装置です。
ヴィタリック・ブテリン
ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)は、イーサリアムの共同創設者であり、現代の暗号資産とブロックチェーンの世界における重要な人物です。
彼はロシア系カナダ人で、子供の頃から数学とコンピューターに深い関心を持っていました。
彼が初めてビットコインと出会ったのは2011年で、その後すぐにその可能性に魅了され、この分野に深く関与するようになりました。
彼は最初、ビットコイン関連のニュースや情報を提供するオンライン出版物「Bitcoin Magazine」の共同創設者として活動し、その後数年でビットコインコミュニティ内で名声を高めました。
しかし、ブテリンはビットコインの技術が有する限界にフラストレーションを感じていました。
それは主にビットコインのブロックチェーンが、単に取引を記録する以外の用途には対応していなかったことによるものです。
そのため、彼はスマートコントラクトという概念を用いて、ブロックチェーン技術を利用した新たなプラットフォームを開発することを決意しました。
その結果生まれたのが「イーサリアム」です。
イーサリアムはブロックチェーンベースの新しいプラットフォームで、スマートコントラクトというプログラム可能な契約を利用することができます。
これにより、イーサリアムは単なる暗号資産を超えて、ディアプリケーションの開発と運用を可能にする革新的なプラットフォームとなりました。
これらの業績により、ヴィタリック・ブテリンは暗号資産とブロックチェーンの世界における最も影響力のある人物の一人となり、彼の考えや見解は幅広く注目を集めています。
イーサリアムの功績
イーサリアムは、ブロックチェーン技術と暗号資産の領域において、幾つかの重要な功績を達成しています。
スマートコントラクト
イーサリアムは、ブロックチェーンネットワーク上で自動的に実行されるプログラム、つまりスマートコントラクトの概念を初めて大々的に採用したプロジェクトです。
これにより、取引の信頼性と透明性が大幅に向上しました。
分散アプリケーション (DApps)の促進
分散型アプリケーション(DApps)とは、中央のサーバーに依存せずに分散型ネットワーク(通常はブロックチェーン)上で動作するアプリケーションのことを指します。
DAppsは中央集権的な管理者がいないため、システムの透明性、セキュリティ、そして不変性が向上します。
イーサリアムが「分散アプリケーション (DApps)の促進」に貢献しているとは、イーサリアムのプラットフォームがDAppsの開発と利用を容易にし、促進していることを意味します。
具体的には以下のような特性があります
イーサリアム仮想マシン(EVM)
イーサリアム仮想マシンは、スマートコントラクトの実行環境を提供します。
これにより、開発者はイーサリアムのブロックチェーン上でDAppsを開発し、実行することが可能になります。
イーサリアム仮想マシン(EVM)をわかりやすく説明するために、あなたがコンピュータのゲームをプレイする場合を想像してみてください。
あなたのコンピュータには、多くの種類のゲームをプレイするための能力があります。
しかし、それらのゲームは全てコンピュータが理解できる言語、つまりコードで書かれています。
また、それぞれのゲームはそのゲームをプレイするための特定のルールを持っています。
ここで、EVMはあなたのコンピュータのようなものです。
そして、ゲームはイーサリアムのブロックチェーン上で動作するアプリケーション、つまりDApps(分散型アプリケーション)やスマートコントラクトです。
EVMはこれらのアプリケーションがイーサリアムのブロックチェーン上で正しく、安全に動作するための「プレイの場」または「実行環境」を提供します。
DAppsやスマートコントラクトは特定のプログラミング言語(主にSolidityやVyper)で書かれていますが、それを実行する前に「バイトコード」に変換され、EVMがそのバイトコードを理解して各スマートコントラクトを実行します。
そして、それぞれのスマートコントラクトはEVM上で独立して実行されるため、もし何か問題が起こってもそれが他のスマートコントラクトや全体のネットワークに影響を与えることはありません。
これにより、イーサリアムは世界中の誰でも安全にスマートコントラクトやDAppsを作成し、利用することができる開かれたプラットフォームを提供しています。
ユーザーコミュニティと開発者コミュニティ
イーサリアムには広大なユーザーコミュニティと開発者コミュニティがあり、新しいDAppsの採用と改良を促進します。
イーサリアムのユーザーコミュニティは、仮想通貨イーサを所有していたり、イーサリアムブロックチェーン上のDApps(分散アプリケーション)を使用している個人や組織から成り立っています。
イーサリアムのユーザーコミュニティは非常に活発で、世界中のイベントや会議で情報交換を行ったり、オンラインのフォーラムやソーシャルメディアで議論を交わしたりしています。
これらのユーザーは新しいDAppsの採用や、イーサリアムプラットフォームの実用性と普及に大いに寄与しています。
イーサリアムの開発者コミュニティは、イーサリアムのプロトコル自体を開発・改良したり、イーサリアム上で動作するDAppsやスマートコントラクトを開発する人々で構成されています。
これらの開発者は、SolidityやVyperといったプログラミング言語を用いて、ブロックチェーンテクノロジーの可能性を追求しています。
イーサリアム開発者コミュニティもまた、非常に活発で、ハッカソン(特定のテーマや課題に取り組むイベント)や開発者向けのカンファレンス(特定のテーマや課題に取り組むイベント)を通じて、新しい技術やアイデアの共有、改良提案などを行っています。
それぞれのコミュニティは、イーサリアムエコシステム全体の成長と発展に寄与しており、イーサリアムが現在のブロックチェーンテクノロジーの中心的な役割を果たす要因となっています。
イーサリアムブロックチェーン上で動作するさまざまなアプリケーション、サービス、企業、および開発者が連携して形成するデジタル経済のことを指します。
このエコシステムの中心には自動化された契約であるスマートコントラクトがあり、それらは分散型アプリケーションや分散型金融サービス、さらにはデジタル資産の所有を証明する非代替性トークンのような概念を実現します。
イーサリアムエコシステムは、これら全ての要素が組み合わさり一緒に動作することで、全く新しい形のデジタル経済を創り出しています。
オープンソース
オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードが公開され、誰でも自由に閲覧、改変、配布できるライセンスモデルのことを指します。
このモデルでは、開発者たちは共有のソフトウェアコードを共同で改良し、新しい機能を追加したり、バグを修正したりします。
イーサリアムはオープンソースのプロジェクトであり、誰でも自由にアクセスし、貢献することができます。
これにより、新しいアイデアや技術がコミュニティ内で共有され、イノベーションが推進されます。
これらの特性により、イーサリアムはDAppsの開発と普及を大いに促進しており、多くの分散型アプリケーションがすでにイーサリアム上で構築・運用されています。
例えば、分散型金融(DeFi)サービス、分散型取引所(DEX)、NFT(Non-Fungible Token)マーケットプレイスなどが挙げられます。
ブロックチェーンとスマートコントラクトを用いて、伝統的な金融サービスをデジタル化し、誰でもアクセスできる形で提供することを目指しています。
銀行や金融機関のような中央管理機関が必要なく、取引や契約を自動的に行うシステムです。
具体的なサービスとしては、貸出・借入、デジタル資産の取引、保険などがあります。
DeFiは金融サービスの民主化を目指し、全ての人々に新たな金融のアクセス機会を提供する可能性を秘めています。
仮想通貨の売買を行う場所で、中央の管理者やサーバーを必要としません。
ユーザー自身が自分の資産をコントロールし、誰でも自由に利用でき、取引の透明性が高いのが特徴です。
例えば、伝統的な市場に店主がいるのが中心型取引所なら、DEXはフリーマーケットのようなもので、売り手と買い手が直接取引を行う場所と考えられます。
デジタルアセット(例:デジタルアート、音楽ファイル、仮想不動産など)の売買を行うオンラインプラットフォーム(インターネットを通じてユーザーがサービスを利用したり、商品を売買したりするためのウェブサイトやアプリケーションです。例:Amazon、楽天など)です。
各NFTは他のどのトークン(ブロックチェーンネットワーク上で取引や保有ができるデジタル資産)とも異なる独自の特性を持っており、所有権がブロックチェーン上で証明されます。
これにより、アーティストやクリエイターは自身の作品を売り、コレクターはそれを公式に所有することができます。
ただし、適正な価格設定、著作権問題、環境への影響などの課題も存在します。
デジタル経済の創出
イーサリアムは、トークンエコノミー、ICO (初期コインオファリング)、DeFi(分散型金融)など、新しいデジタル経済の創出に大きな役割を果たしています。
お金の代わりに「デジタルトークン」を使って報酬を得たり、商品やサービスを交換したりする経済のことです。
例えば、ゲーム内で特定の行動をするとポイントがもらえて、そのポイントでアイテムを買ったり、他のプレイヤーと交換したりすることを想像してみてください。
これが「トークンエコノミー」の基本的な考え方です。
ただし、このデジタルトークンはゲームの中だけでなく、現実の世界でも使われています。
例えば、特定のウェブサイトで記事を書くとトークンがもらえ、それを他のユーザーと交換したり、特定のサービスを購入するのに使ったりすることもあります。
このように、トークンエコノミーは、私たちが普段行う様々な行動をデジタルトークンという形で報酬化し、それを自由に交換や取引することができる新しい経済の形です。
イーサリアムの将来性
イーサリアムは、その潜在能力と将来性から、多くのエキスパートや投資家から注目を集めています。
イーサリアム 2.0
イーサリアム 2.0(しばしばETH2やSerenityとも呼ばれる)は、イーサリアムのブロックチェーンをアップグレードし、スケーラビリティとセキュリティを改善することを目指した大規模なアップデートです。
イーサリアム 2.0は以下の主要な特徴を持つ予定です
Proof of Stake (PoS)
現在のイーサリアムは「Proof of Work (PoW)」という方法で動作しています。
これは「仕事証明」と訳すことができ、誰かが新しいブロックを追加するためには、複雑な計算を解く必要があります。
しかし、この方法は大量の電力を消費します。
それに対して、「Proof of Stake (PoS)」は「持ち株証明」と訳すことができ、自分がイーサリアムの所有者であることを証明するだけで、新しいブロックを追加することができます。
これはよりエネルギー効率的で、取引の処理速度も向上します。
シャーディング
現在のイーサリアムでは、全ての取引やデータを全てのノード(コンピュータ)が処理しなければなりません。
これは非常に時間とリソースを消費します。
しかし、「シャーディング」は、全てのデータを小さな部分(シャード)に分割し、それぞれのシャードを異なるノードが処理することで、全体の処理能力を大幅に向上させる方法です。
クロスリンク
「クロスリンク」は、異なるシャード(分割されたデータの小さな部分)間で情報をやり取りするための「橋」のようなものです。
これにより、全体のネットワークがより効率的に動作するようになります。
eWASM
現在のイーサリアムでは、スマートコントラクトは「EVM」という環境で実行されます。
しかし、イーサリアム 2.0では、「eWASM」という新しい環境が導入され、スマートコントラクトの実行速度が向上します。
EVMはイーサリアムの「心臓部」のようなもので、イーサリアムの特徴的な機能であるスマートコントラクトを実行する役割を果たします。
たとえば、EVMを大きな工場と考えてみてください。
スマートコントラクトは、この工場で組み立てられる製品の「設計図」です。EVMはこの設計図を読んで、製品を作り出すことができます。
また、この工場は一つの場所に集中しているのではなく、世界中のさまざまな場所にバラバラに存在します。
これにより、一つの工場が故障しても他の工場が働き続けることができ、全体としてのイーサリアムシステムが安定して機能し続けます。
そして、この工場で製品を作るためには「ガス」というエネルギーが必要です。
これは、イーサリアムで行われる各種計算やデータの保存に対する料金のことを指します。
このガス代は、工場(EVM)が働くための「燃料」のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
これらの変更により、イーサリアム 2.0は現行のイーサリアムよりも速く、安全で、効率的になると期待されています。
DeFiとNFTの台頭
DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)は、イーサリアムベースのプロジェクトであり、これらの技術の台頭は、イーサリアムの重要性と有用性を一層高めています。
エンタープライズの採用
企業や政府機関もまた、イーサリアムの技術を活用して、透明性を向上させ、コストを削減し、効率を改善する方法を模索しています。
これは、イーサリアムの技術が社会全体に広く受け入れられる可能性を示しています。
以上のように、イーサリアムは既に多大な功績を上げており、その将来性は非常に明るいと言えるでしょう。
コンピュータが理解できる「言葉」は、私たちが普段使う言葉とは異なり、0と1だけのバイナリ形式で表されます。
しかし、私たち人間が0と1だけでコードを書くのは非常に難しいですよね。
そのため、私たちはもっと理解しやすい言語、例えばPythonやJavaScriptなどのプログラミング言語を使ってコードを書きます。
しかし、これらのプログラミング言語で書かれたコードは、そのままではコンピュータは理解できません。
そこで「コンパイラ」という特別なプログラムを使って、私たちが書いたコードをコンピュータが理解できるバイナリ形式に変換します。
この時、直接バイナリ形式に変換する代わりに、「バイトコード」という中間的な形式に変換することもあります。
これはコンピュータが理解できる形式ですが、特定のハードウェアやソフトウェアに依存せず、様々な環境で使うことができます。
その後、そのバイトコードを「仮想マシン」と呼ばれる特別なプログラムで実行します。
イーサリアムの場合、開発者はSolidityやVyperなどの言語でスマートコントラクトを書き、それをバイトコードに変換します。そして、それをイーサリアム仮想マシン(EVM)が読み取り、実行します。
つまり、バイトコードは人間が書いたプログラムをコンピュータが理解できる形式に変換する一つのステップと言えます。