アジアにおける暗号資産とブロックチェーンの動向

2023年、アジア圏では暗号資産とブロックチェーンに関する大きな動きが目撃されました。

特に注目すべきは、中国・香港が個人投資家に向けて暗号資産(仮想通貨)取引の扉を突如開放したことです。

この動きは、地域全体におけるデジタル資産への関心の高まりを示唆しています。

また、この年は海外の暗号資産交換業者がアジア太平洋地域への進出を積極的に進め、グローバルな事業展開の新たなフェーズを迎えたことも重要なポイントです。

これは、アジア市場のポテンシャルと、暗号資産業界におけるその重要性を物語っています。

さらに、ブロックチェーンゲームの分野でも新しい動きが見られ、革新的な技術とエンターテイメントの融合が進んでいます。

この記事では、これらの動きを中心に、アジアにおける暗号資産やブロックチェーンの最新のトレンドを詳細に解説し、その影響と今後の展望を探ります。

香港の暗号資産市場開放と中国の規制強化

香港の暗号資産に関する新政策

香港は2023年6月1日、暗号資産サービス事業者に対するライセンス制度を導入しました。

これは、香港がアジアにおける暗号資産の中心地としての地位を確立するための重要な一歩です。

香港証券先物委員会(SFC)がライセンス申請の受付を開始し、これにより個人投資家に向けた暗号資産の取引が2023年の下半期から可能になる見通しです。

中国の暗号資産に対する厳格な姿勢

一方、中国は2017年9月以降、暗号資産交換業者の運営やICOを含む暗号資産による資金調達を禁止しています。

中国政府は、資本管理を強化し、人民元の安定を図るために、暗号資産取引に厳しい規制を設けてきました。

この背景には、国内の資金流出を抑える意図があると考えられます。

「一国二制度」に基づく香港の独自の動き

中華人民共和国香港特別行政区としての香港は、「一国二制度」の下で独自の政策を展開しています。

中国本土とは異なり、香港では2018年以降、機関投資家に限定して暗号資産取引が許可されてきました。

2022年10月、香港政府は政策を転換し、暗号資産の取引を個人投資家にも開放する計画を発表。

これにより、香港は国際的な暗号資産取引のハブとしての地位を築くことを目指しています。

香港の暗号資産市場への新たな一歩:ライセンス制度の導入

香港の暗号資産ライセンス制度の要件

香港は暗号資産交換業者に対するライセンス制度を導入し、その要件として500万香港ドル(約8,900万円相当)以上の資本金、マネーロンダリング防止対策、テロ資金調達防止策、実務経験を持つ役員の起用などを定めています。

この制度のもとで、ライセンスを取得しない業者は香港市場からの撤退を余儀なくされます。

中国本土企業の香港進出

新しいライセンス制度により、特に中国本土の企業が香港市場への進出に注目しています。

中国国有不動産大手の緑地集団傘下の金融子会社や、中国のネット保険大手が設立したインターネット専業銀行などが、香港でのライセンス申請や提携を検討しています。

これらの動きは、中国内での暗号資産取引の禁止を背景に、新たなビジネスチャンスを求める動きと言えます。

暗号資産取引に関する具体的な規制内容

香港の新しい規制では、暗号資産取引に対する具体的なルールが設けられています。

個人投資家が取引できる銘柄は、時価総額が高く独立した2つの指数に含まれるものに限定され、過去12ヶ月間の不正な記録がないことが求められます。

ステーブルコインの取り扱いについては、現在中国全土で禁止されているため、新規制の導入が待たれます。

また、ライセンスを取得した業者でも、金利や貸借サービスの提供、エアドロップを含む特定のプロモーション活動は禁止されています。

世界的な暗号資産取引の動向

日本は世界に先駆けて暗号資産取引に関する法整備を進めていますが、特に米国では取引環境の整備が遅れているとされています。

米国では、明文化されたルールがないなかでのSECによる訴追が続き、業界内での危機感が強まっています。

このような背景の中、香港の新しい規制は世界的にも歓迎され、アジア圏が大手業者の受け皿としての役割を果たす可能性が高まっています。

香港の暗号資産市場への新たな一歩は、中国本土の厳格な規制と対照的な動きを見せています。

香港のライセンス制度は、アジア圏内での暗号資産取引の新たな機会を創出し、世界的な暗号資産市場にも影響を及ぼすことが予想されます。

アジアのWeb3・ブロックチェーンの最前線

Web3は、次世代型インターネットとして長らく注目を集めていますが、その具体的な仕様やユースケースに関する不確かさから、一部には懐疑的な意見も存在します。

投資面においては当初の盛り上がりからいくぶん冷静な見方がされつつありますが、アジア圏ではこの新しい技術に対する動きが依然として活発です。

香港のWeb3開発推進タスクフォースの設立

2023年6月30日、香港政府はWeb3開発を推進するためのタスクフォースを設立しました。

この専門グループは、香港の財務長官が委員長を務め、主要な政府高官や金融規制当局、関連市場セクターの専門家15人から成ります。

このタスクフォースは、Web3を含むブロックチェーン技術の強みを活用し、金融、貿易、事業運営、日常生活における様々な課題の解決を目指します。

香港のWeb3とブロックチェーンへの取り組み

香港のWeb3開発推進タスクフォースは、革新的な技術の探求を先導し、新しいアプリケーションモデルの創造を目指します。

この動きは、適切な規制と発展促進のバランスを見極めつつ、才能ある人材と一流の企業を惹きつけ、繁栄するエコシステムの構築を促進することを目的としています。

財務長官は、タスクフォースが香港をWeb3のハブへと発展させる重要な役割を果たすとの信念を表明しています。

アジア圏、特に香港はWeb3とブロックチェーン技術の発展において重要な役割を果たしています。

この地域の積極的な取り組みと専門的なアプローチは、次世代インターネットの進展における新たな潮流を生み出す可能性を秘めており、世界的な注目を集めています。

シンガポール中央銀行によるWeb3への大規模投資

シンガポール金融管理局(MAS)は、2023年8月7日に金融分野のテクノロジーとイノベーションへの大規模な投資を発表しました。

これにはWeb3も含まれ、最大1億5,000万シンガポールドル(約160億円相当)が拠出される予定です。

この投資は「金融セクター技術革新スキーム(FSTI 3.0)」の一環として、3年間に渡り実施されます。

MASは、AI、データ分析、規制テクノロジーの高度化を目指すとともに、持続可能な金融や国際的な決済連携、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発にも力を入れています。

シンガポールのプロジェクト・オーキッドとその展開

シンガポールは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発においても先進的な取り組みを進めています。

プロジェクト・オーキッドとして知られるこのイニシアチブは、デジタル・シンガポールドルの実現を目指し、2022年秋には消費者へのデジタル・シンガポールドルクーポンの発行を含む実証実験を実施しました。

2023年6月にはCBDCやトークン化された銀行預金、ステーブルコインで使用できる共通プロトコルの設計書が公表され、AmazonやDBS銀行などの大手企業も試験運用に参加しています。

ベトナム発のブロックチェーンゲーム「アクシー・インフィニティ」

ベトナムのゲームスタジオSky Mavisによって開発された「アクシー・インフィニティ」は、ブロックチェーンゲーム業界における「Play to Earn」モデルの草分けです。

特にフィリピンなどの新興国でこのゲームを通じて生活費を稼ぐユーザーも登場し、多くの後続サービスの発展に寄与しました。

アクシー・インフィニティの成功は、Move-to-EarnやLearn-to-Earnなど、ブロックチェーンゲームの新しいアイデアの登場にも影響を与え、アジア圏内でのブロックチェーン技術の可能性を広げています。

アジアにおけるブロックチェーンとWeb3の動向は、シンガポールの中央銀行の大規模投資やベトナムから生まれた革新的なブロックチェーンゲームによって、さらに加速しています。

これらの取り組みは、アジアがデジタル技術の分野で世界をリードする新たなフロンティアであることを示しています。

ブロックチェーンゲームの展望:アジア市場と日本のゲーム業界

DappRadarのレポートによると、アジア市場はブロックチェーンゲームおよびWeb3ゲーム業界にとって重要な役割を果たしています。

世界のビデオゲームプレイヤーの55%にあたる17億人以上のゲーマーがアジアに存在し、この地域はゲーマー数とゲーム収益の大部分を占めています。

日本や韓国、中国などの国々は、長年にわたり世界のゲーム市場を牽引してきました。

日本と韓国のゲーム企業によるブロックチェーン技術の採用

日本と韓国のゲーム企業は、ブロックチェーン技術の採用において先駆的な役割を果たしています。

例えば、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのNFT関連特許やスクウェア・エニックスのブロックチェーンゲーム参入などがその動きを示しています。

これらの企業は、ブロックチェーン技術を活用して新しいゲーム体験を提供しようとしています。

日本ゲーム業界におけるブロックチェーンの本格的な取り組み

日本のゲーム業界におけるブロックチェーン技術の活用は、デジタルゲームの領域で新たな地平を切り拓いています。

2023年後半から2024年前半にかけての期間は、この分野での重要な節目となる見込みです。

予定されているのは、人気キャラクターをフィーチャーしたブロックチェーンベースのゲームのリリースです。

これらのゲームは、従来のゲーミング体験を大きく進化させる可能性を秘めています。

これらのブロックチェーンゲームは、プレイヤーがゲーム内で稼ぐ仮想通貨やアイテムを実際の価値を持つアセットとして交換・取引できるように設計されている可能性が高いです。

このアプローチにより、ゲーム内の経済システムはリアルワールドの経済と密接に連携し、プレイヤーに新たな収益の機会を提供します。

また、ブロックチェーン技術を活用することで、キャラクターやアイテムの所有権を確実に記録し、ゲーム外での取引やコレクションが可能になります。

これにより、キャラクターやアイテムは単なるゲーム内要素ではなく、価値あるデジタル資産として扱われるようになります。

さらに、ブロックチェーンゲームの開発においては、透明性と不変性が重要な役割を果たします。

ブロックチェーンの公開台帳技術を使用することで、ゲームのルールやトランザクションが透明に管理され、不正行為や改ざんを防ぐことが可能になります。

日本のゲーム業界におけるこれらの取り組みは、ゲームの概念を拡張し、より豊かで多様なゲーム体験を提供することが期待されています。

プレイヤーは、単にゲームを楽しむだけでなく、新しい種類のデジタルアセットを管理し、創造的な方法でそれらを活用することができるようになります。

この進展は、ゲーム業界だけでなく、デジタル資産市場においても大きな影響を与えることでしょう。

ブロックチェーンゲームの将来的な可能性

ブロックチェーンゲームは、知的財産権(IP)の新しい利用法を開拓することができます。

ゲーム企業は、自社のキャラクターIPを保持しながら、そのIPを使用したゲーム開発を個人に許可することが可能です。

アジア、特に日本の豊富な知的財産権の所有により、この分野における優位性が高まっていると期待されます。

アジア市場、特に日本のゲーム業界におけるブロックチェーン技術の採用は、ゲーム体験を大きく変革する可能性を秘めています。

ブロックチェーンゲームの進展は、新しいビジネスモデルの創出とともに、ゲームの未来を形作る重要な要素となるでしょう。

まとめ

アジアにおけるブロックチェーンとWeb3の技術は、ゲーム業界をはじめとして多方面にわたって顕著な進展を遂げています。

香港政府はWeb3開発推進のための専門タスクフォースを設立し、ブロックチェーン技術を金融、貿易、事業運営、日常生活の課題解決へと応用しています。

一方、シンガポール中央銀行は金融分野の技術革新に巨額の投資を行い、特にブロックチェーンとWeb3分野への支援に注力しています。

また、日本のゲーム業界は、2023年後半から2024年前半にかけて、ブロックチェーン技術を活用した人気キャラクターをフィーチャーしたゲームをリリースする計画を進めており、これによりゲームの概念の拡張とゲーム体験の進化が期待されています。

これらの動きは、アジアがデジタル技術の新たなフロンティアであることを示しており、ブロックチェーン技術の広範な採用が今後さらに進むことが予想されます。

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